2001 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシア哲学のコスモロジーにおける生命像の探究
Project/Area Number |
13018217
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
瀬口 昌久 名古屋工業大学, 工学部, 助教授 (40262943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂下 浩司 名古屋工業大学, 工学部, 講師 (20332710)
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Keywords | 健康のしるべ / ティマイオス / ヒッポクラテス / アリストテレス / ガレノス / 外的目的性 / 内的目的性 / 生物学的世界観 |
Research Abstract |
今年度は、古代ギリシアの生命像に大きな影響力を与えている、ギリシアの医学思想に焦点をあてた研究を行った。 まず瀬口は、プルタルコスの『健康のしるべ』とプラトンの『ティマイオス』の医学思想を比較検討した。養生法を中心とするプルタルコスの医学思想はヒッポクラテス学派から影響を受けており、病理の自然学的解明よりも養生法の経験的有効性を重視した立場を選んでいるが、その養生法の内実はプラトンの医学思想に最も大きく依拠していることが明らかになった。プルタルコスは、魂が節制を欠き、身体の自然本性に反した魂の欲望から生ずる食欲や飲酒などが、身体の病気の最も大きな原因となると考える。つまり、食生活や運動や休息などに関する生活習慣の過ちが病気を生み出すのである。生活習慣病を防ぐためには、生活方法とそれを支配する魂のあり方を変えねばならない。身体の病気の治療は、身体を支配する魂の配慮や世話に及ばざるをえない。魂の世話と配慮は、健康の目的である人間の社会的行動や生き方の問題と深い関連をもつ。すなわち、健康とは人間のすぐれた生き方として、プラトンが述べる徳の問題にまで通じていることが論究された。 また、坂下は、「ヒッポクラテス・アリストテレス・ガレノスにおける魂論と生物学・医学・生理学」と題する研究発表を行った。魂論は通常心身関係や死の問題との関係で論じられるが、生命の誕生あるいは生殖の問題、また病の問題との関係で、生物学・医学・生理学の観点から具体的に魂論を検討した。また、「アリストテレスにおける外的目的性の問題」というテーマで彼の生物学的世界観を研究した。近年のアリストテレス研究では、生物体とその器官の内的な目的関係(内的目的性)に焦点が絞られており、「全体」が持つ目的性、あるいは生物体の外部で成立する目的関係(外的目的性)は否定的な取り扱いを受けているが、これに異議申し立てをするものである。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 瀬口 昌久: "医学と哲学の境界線-プルタルコス『健康のしるべ』における医学思想-"Litteratura. 22. 33-48 (2001)
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[Publications] 坂下 浩司: "技術倫理(Engineering Ethics)について"日本建築学会『建築雑誌:特集=倫理』. Vol.116, No.1473. 18-19 (2001)
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[Publications] 坂 下 浩 司: "はじめての工学倫理"昭和堂. 238 (2001)