2001 Fiscal Year Annual Research Report
古ジャワ世界における『マハーバーラタ』の倫理観の伝承と受容
Project/Area Number |
13018234
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
安藤 充 愛知学院大学, 文学部, 教授 (90183152)
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Keywords | 古ジャワ語 / マハーバーラタ / バガヴァッドギーター / ビーシュマパルワ |
Research Abstract |
古ジャワ版『マハーバーラタ』の倫理観の伝承と受容に関して、本年度は「バガヴァッドギーター」の古ジャワ版の読解、及びサンスクリット原典との比較をおこなった。 まず、既刊のテキスト2つを比較しながら読解してテキスト解釈上の問題を摘出した。テキストは電子テキスト・データベース化した(設備備品費、謝金)。これとあわせて文献資料調査・収集(設備備品費、外国旅費、国内旅費、謝金)をおこない、今後のテキスト再校訂に備えることができた。 古ジャワ版「バガヴァッドギーター」の特徴について、テキスト伝承・解釈の両面から、本年度の読解・原典対照の成果の要点を以下に述べる。 1.古ジャワ版テキストにはサンスクリット原典700偈のうち81偈が引用されているが、原典のプーナ校訂版と異なる読みをしているテキストも少なくない。その多くは校注にも、諸註釈にも一致する読みがない。さらに注目すべきは、原典の現行刊本および諸註釈にもないサンスクリット詩節が古ジャワ版に含まれている点である。これについては典拠が未詳であり、今後は『マハーバーラタ』以外のサンスクリットテキストも対象にしてテキスト伝承の源泉をたどる必要がある。 2.サンスクリット引用詩節につづく古ジャワ語解説部分で、古ジャワ版独特の解釈を示している箇所がみられる。例えば、「行為自体に関心を向け、結果に執着するな」という趣旨の原文が、古ジャワ語解説の中では、「行為は何らかの結果をかならず生むから、だから、悪行はするな...」となっている。本来は、「神に帰依してあとは戦士階級としての本務を果たすべし」という、ヒンドゥー独特の価値観を示しているのだが、古ジャワ版では因果論的倫理観に変容している。このような古ジャワ的解釈の体系的な分析を今後おこなって行く予定である。
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