2001 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀における二つの聖書批判のアプローチ:バルーフ・スピノザとリシャール・シモン
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13018239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
手島 勲矢 大阪産業大学, 人間環境学部, 助教授 (80330140)
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Keywords | バルーフ・スピノザ / ヘブライ語文法 / 聖書解釈 / リシャール・シモン |
Research Abstract |
◆13年度の夏、ハーバード大学・ホートン図書館の協力を得て、リシャール・シモンの「旧約聖書の批判的歴史」の1682年の英語版、またアブラハム・デ・バルメシュのヘブライ語文法(16世紀)、また19世紀のユダヤ人によるヘブライ語でかかれたスピノザ研究のコピーおよびマイクロ・フイルムを手に入れることができた。これらの資料の解明はこれからであるが、19世紀のユダヤ人(シュロモー・ルビンなど)がスピノザについてこれだけ詳細にヘブライ語による議論を繰り広げていたことは、予想をはるかに超えるものであった。彼らのスピノザ理解がヨーロッパ文化にどのような影響を及ぼしたのかは未知数であるが、これらが、スピノザのヘブライ語文法が19世紀の学者によってどのように読まれ解釈されたのかを理解する文脈を形成していることは確実である。 ◆13年度の夏、第13回世界ユダヤ学会議にて、スピノザのヘブライ語文法の発表を行う。そのところにて、スピノザがシェバを母音とみなした背景に、スペイン語の影響があるのではないかと、聴衆から指摘され、その方面についての研究の必要性があることを実感する。加えて、13年度の秋、デンバーで開かれたSBLの総会にて、「ラッシーのヒトパエル動詞理解」について発表する。日本の学会にては、理解者が少なかった議論だけに、中世の聖書註解をよく知るユダヤ系研究者の承認を得たことは、大きな自信となった。 ◆13年度の成果のもっとも大きなものは、インド論理学との出会いである。ユダヤ学との接点は薄いと思われていただけに、ターミノロジーの類似性(ミダーvs.量)、インド論理学とヨーロッパ論理学との差異、またサンスクリップトの文法の古代における成立などは、ラビの聖書解釈、口伝律法と成文律法の論理的補完関係、中世以前のヘブライ語文法の問題などと、今後大きな比較研究の可能性を秘めていると感じられる。特に、本研究の課題の一部である、スピノザが背景にするラビの論理学とリシャール・シモンのギリシア的・キリスト教的背景の差異を考えるのに、インド論理学の問題は、比較検証の脈絡整備に便利であると思われる。
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Research Products
(2 results)