2001 Fiscal Year Annual Research Report
中国広東省の消減の危機に瀕した言語、ショオ語の緊急調査
Project/Area Number |
13019204
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 裕樹 京都大学, 人文科学研究所, 助手 (30324700)
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Keywords | 言語学 / ミャオ・ヤオ諸語 / ショオ語 / 中国の少数民族 / 消滅の危機 / 緊急調査 |
Research Abstract |
ショオ語はミャオ・ヤオ諸語に属するとされるが、蓄積されたデータが少ないためにミャオ・ヤオ諸語における位置付けや方言間また近隣の諸言語との関係といった基本的な問題も未だほとんど明らかにされていない。ところが、ショオ語を母語とする話し手の数は、ショオ族の総人口63万人余り(1990年)のうち、わずかに数百人規模と推定され、包括的な記述・保存への取り組みが急務である。 筆者は平成12年度に調整班の依頼により、ショオ語の四方言のうち、記述研究の存在しない海豊方言について予備調査を行った。本年度は、この予備調査に基づいて、二回(合計六週間)の現地調査を行い、4000語程度の語彙と300ほどの例文を音声資料・画像資料と共に記録した。これらの資料のうち、例文の一部を整理したものを、A03班の『論集2』に"200basic sentences of She language"として発表している。この論考では、例文を資料として提供したほか、昨年度『論集1』に発表したショオ語海豊方言の音韻体系に修正を加えた。特に、語末子音(-t,-k)を伴う音節の声調は、先行研究では「ピッチが不安定で昇調で発音されることも降調で発音されることもある」とされており、筆者も『論集1』の論考ではそのように処理していたが、本年度の現地調査によると、これは誤りで、語末子音を伴う音節の声調は二系列四声調に分類できることがわかった。これは、おそらく漢語からの借用時期の違いによるもので、いわゆる「文白異読」を成している。この新たな知見については、近い将来に論文として発表する予定である。 また、現地のショオ語話者の希望により、協同してショオ語文字案を作成した。現地への還元の試みの一つとして、収集した民話をこの文字で書き記した小冊子をまもなく出版する。ショオ語保存に向けての一助となることが期待される。
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Research Products
(1 results)