2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021210
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
磯部 彰 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (90143841)
|
Keywords | 『普覆週流華厳五十三参宝巻』 / 『華厳経』入法界品 / 『観薬王薬上二菩薩経』 / 黄天道・円頓教 / 五十三仏名 / 二郎宝巻 / 孟姜女宝巻 / 泰山娘娘宝巻 |
Research Abstract |
平成13年度の研究計画の中心は、第1は、新発見の『普覆週流華厳五十三参宝巻』の内容分析、第2は、教派系宝巻と道教経典や仏教経典との出版上の関係、第3は、教派系宝巻と初期の故事系宝巻との性格比較による華厳五十三参宝巻の研究に主力が置かれた。第1の結論としては、華厳五十三参宝巻が「華厳五十三参」から連想される『華厳経』入法界品の善財故事を扱う故事系宝巻ではなく、『観薬王薬上二菩薩経』に見える過去五十三仏の名称を借りて、無字経・帰郷・観音老母などの功徳を説く黄天道・円頓教の教派宝巻の一つであって、『西遊記』故事を摂取しつつも、文学的構成をとる故事系宝巻とは一線を画す民間経典であることを解明した。同時に、黄天道の教祖たちが、仏典の五十三仏名を借用していることは、仏教の影響下に成立した宗教と見倣すことも掘り起こした。第2に、教派系宝巻で折帖形式の体裁をとる初期の宝巻は、仏典や道経典とともに北京などの経房、経鋪といった宗教出版物専門の出版システムから作られたもので、決して王朝側から禁段対象と目されていたのではないことを提起した。おそらく、清の嘉慶年間から教匪として位置づけられることにより、その出版方法や書誌形態が変化したのであろうが、この点は未解決なので次年度で取り組む。第3は、第1の五十三参宝巻の内容分析とも関連するが、初期の故事系宝巻と考えられる嘉靖刊二郎真君宝巻の内容と対比し、二郎宝巻が特定の教派のために作られたものではないらしいことを考えると、故事系宝巻と教派系宝巻とは、宝巻であっても用途による内容構成の区別が存在するらしいことが推察された。この点は、目下、書誌分析を行なっている嘉靖から明末ごろの孟姜女宝巻や泰山娘娘宝巻と対比して、更に実証的に検証する必要があるため、次年度の研究課題としている。総体的に見て、教義のみ説く教派系宝巻は、清初の華厳五十三参宝巻あたりで衰退期に入るのではないか。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] 磯部 彰: "『唐僧取経図冊』の研究-「西遊記物語絵」史における『唐僧取経図冊』"唐僧取経図冊. 3-18 (2001)
-
[Publications] 磯部 彰: "「上師伏法説寿生経」版木について"ニューズレター『ナオ・デ・ラ・チーナ』. 第2号. 110 (2002)
-
[Publications] 磯部 彰: "宮城図について"ニューズレター『ナオ・デ・ラ・チーナ』. 第2号. 110 (2002)