2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20156574)
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Keywords | モンゴル大蔵経 / 元朝時代 / 言語接触 |
Research Abstract |
ある文献が書写の対象から印刷出版の対象へと昇華する経緯とそこで生じる言語の変容に関わる問題を、モンゴル世界における大蔵経出版の経緯に例を求めた研究「モンゴル大蔵経の成立過程」を平成13年6月開催の「東アジア出版文化の研究・第1回研究集会」において発表し、8月開催の「国際ワークショツプ・漢文古版本とその受容(訓読)」において指定討論者として知見を述べた後、10月開催の「国際シンポジウム・モンゴル語仏典研究の新展開」において、印刷出版が開始された元朝時代の言語接触の様態解明を仏典に素材を求めた研究「Tibeto-Mongolica」を発表した。さらに、12月開催の「第1回東アジア出版文化に関する国際学術会議」における総合パネルデイスカッション「木版出版は東アジア近世社会をいかに変容させたか」の司会をつとめた。モンゴルにおける出版文化の実相解明には不可欠な仏典の伝承と流布の経過解明に必要なモンゴル本土やわが国を含む周辺諸国における文献の精査と整理に着手し一定の成果を上げた。その一端は上記の共同研究に対する貢献として結実している。なお、上記の各研究集会・シンポジウム・学術会議等で接触した各国の研究者の情報提供に鑑みると、この作業は当初の予想以上の大規模なものとなる公算が高くその実現に向けての予備的調査も実施した。現地調査を含む文献資料の精査と整理は、なお道半ばの感が否めないが、現在活用し得る限りにおける資料に基づく問題点の把握とその解明に関しては、一定の成果を得たと考えてよい。ただし、それを公刊論文のかたちとして広く批判を仰ぐことは、種々の制約から次年度に譲らざるを得なかったのが、残念である。
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