2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021231
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
樋口 康一 愛媛大学, 法文学部, 教授 (20156574)
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Keywords | モンゴル語 / モンゴル語仏典 / モンゴル大蔵経 |
Research Abstract |
モンゴルにおける訳経の歴史の一端を解明し、元朝時代におけるその出版が実はモンゴルにおける出版の嚆矢に他ならないこと、そしてその出版物が後代に伝承される過程において、いかなる変容を被ったか、もしくは、逆に、被らずに原典の特色を保存したかを、モンゴル語仏典を題材として考究することで、彼地における出版文化のありように実相の一部を解明した。具体的には、『普賢行願讃』、『法華経』、『宝徳蔵般若経』、『宝網経』、『牛首山授記経』に題材を求めて、モンゴル語学・文献学における仏典の資料的価値を考証するとともに、その流布が彼地における出版文化の発達と深く関係することを論証した。元朝時代に完成したモンゴル大蔵経であるが、それ自体は失われ、今日目途し得るものは後代の写本・版本である。しかし、その行文を比較対照し、底本を確定する作業を通じて明らかになるのは、その多くは奥書で数次の改訂を経たと称しつつ実は元朝時代の原典を、その誤訳も含めて忠実に保存していること、また、後代の写本・版本は、形式上はチベット本に依拠する体裁をとるが、実は、原典自体は当初、必ずしもそうではなかったものもある、ということである。また、原典は、作品によって翻訳の質の差が著しく異なることから、大蔵経の出版事業が短時日に性急になされたと考えざるを得ない。さらに、後代の改訂も杜撰で、チベット本との形式的対応にのみ腐心して種々の誤訳が放置されていることも、明らかとした。これらの成果は、現在、いくつかの論文として研究誌の投稿中である。
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