2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021238
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
関場 武 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (20051691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住吉 朋彦 慶応義塾大学, 斯道文庫, 助手 (80327668)
佐々木 孝浩 慶応義塾大学, 斯道文庫, 助教授 (20225874)
高橋 智 慶応義塾大学, 斯道文庫, 助教授 (80216720)
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Keywords | 辞書 / 類書 / 書誌学 / 版本学 / 蔵書研究 / 趙蔭棠 / 歌合類聚 / 韻府群玉 |
Research Abstract |
関場は「節用集」の内の「早引節用」類の諸本研究を進め、高橋は趙蔭棠旧蔵語言学資料の継続調査、関連書のテキスト所在調査を行ない、佐々木孝浩は版本『歌合部類』の影響力を探るべく、同本所収の『歌合貞永元年八月十五夜』について、写本を含めた伝本調査を総合的に行ない、住吉は本邦室町期に流布した元代成立の韻書・類書・詩学書類を調査し版本研究を進捗させた。 このうち住吉は、成果の一部として、『新増説文韻府群玉』の王元貞校本につき論文を執筆した。同書の初刻は元朝に遡るが、世上に流布する版本の過半は、明万暦年間以降に出版された王元貞の校本である。王元貞は明後期の南京の人、国子監に学びながら学者や官僚にならず、文雅と義行を以て官僚社会の周辺に位置を占めた者であるが、主要な足跡は万暦前期の版刻の事業にある。その実態は、前代嘉靖年間に隆盛した家刻本の様式を模倣しつつ、書目・底本の選定については、当時の南京の需要と人脈とに立脚し、本文校正の上では版刻の作業に従う適正化の域に止まり、学術上の公益と共に便宜の提供を図って、恐らくは利潤の確保をも失しないもので、従来の家刻本を変質させ、商業出版の手法に近づけた所が特色である。歴史的には、様々の版本が百出した明末の出版全盛期に連なる先蹤として意義があり、その中でも当該の『韻府群玉』に於いて大量かつ多様の印本を遺存している事実は、その商業的成功を証明している。今日、わが国にも多くこの版本を存するが、これはまた、刊地である南京が中日間の交易の経路に直結していたことの反映であると同時に、彼地の版刻が外へ押し出す流通の圧力を、画期的に強めたことの顕れでもあった。
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Research Products
(2 results)