2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13021250
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
谷井 陽子 天理大学, 文学部, 講師 (40243092)
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Keywords | 明 / 清 / 法律書 / 『大明律』 / 明律 / 裁判制度 / 出版 / 条例 |
Research Abstract |
本年度は、史料収集を中心に活動を行なったが、当面の成果は以下のとおりである。 (1)明代の法律書として註釈と附録附きの『大明律』に注目し、収集・調査した。『大明律』のテキストは様々な形で流布していたが、明代後半には先行する各種の註釈を集めて取り込んだ形式のものが現われる。それらは著明な註釈書の外、現時点で特定できない書物からの引用を多く取り込んでいる。それらの引用状況から、明代の律文解釈の系譜と標準的な理解を窺うことが可能と見込まれる。また、こうした『大明律』は多くの附録を有している。条例や時估一覧表が一般的であるが、裁判文書の書式あるいは律文の具体的適用に関わる詳細な情報、専門用語を歌にしたもの等を盛り込んだものも少なくない。載録の形式は極めて不体裁でレイアウトのおかしいものもあり、内容も偏っているため、情報源が特殊で編集の度合いが低いことがわかり、成立の事情を特定する手掛りとなることが期待される。これらの附録は、清代の同種の書物に見られるものとは異質であり、明代と清代の法律書出版およびその背景となる法律運用状況の変化を反映していることが予想される。 (2)『大明律』とその註釈書のほかに、明代後半には、(1)の附録が独立したような形のもの、巡撫・按察使クラスの官の指示・後援により編纂された条例集、文集の一部をなす個人の著作としての判語・審語、果ては科挙受験用の判の講釈、裁判文書の形式を取った公案小説まで、様々な周辺的書物の出版が見られる。これらの書物を収集・調査することにより、上記いずれの種類の書物も複数の類例をもち、一定の需要と出版による利益(有形・無形を問わず)が、ある程度安定して存在することが推測できた。こうした出版目的と受容形態の一部は、現時点までの裁判制度研究により推定可能であるが、なお不明のものもある。それらについては、さらに類似史料の収集・調査を継続する必要がある。
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Research Products
(1 results)