2001 Fiscal Year Annual Research Report
中国における才子佳人小説の出版と朝鮮・越南・日本への影響
Project/Area Number |
13021252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Takaoka National College |
Principal Investigator |
磯部 祐子 高岡短期大学, 地域ビジネス学科, 教授 (00161696)
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Keywords | 才子佳人小説 / 日本 / 朝鮮 / 越南 / 玉嬌梨 / 金雲翹傳 / 版本 |
Research Abstract |
明清における出版業の確立によって、小説もシリーズもののように多く出版された。その流行は近隣の国々にも影響を与えた。朝鮮、日本、越南どでは輸入された小説を享受し、ダイジェスト版を編んだり翻案したりして、自国の文学と化していった。 たとえば、『玉嬌梨』は、李朝の知識人に読まれ、その流行によって、日本人が朝鮮語を学習するテキストにまで取り入れられることになった。二組の才子佳人の風流な、それでいて大団円に終わる作品内容が儒教的価値観と合致して李朝の人々に受け入れられたと考えられる。一方、『玉嬌梨』の新奇性に乏しいストーリー自体は、日本へはそれほどの影響を与えていない。滝沢馬琴などは、『玉嬌梨』に記された詩の妙は評価しつつも、翻案化を計画したが商業としての出版という点を考慮し、翻案に着手するまでには至らなかった。 また、『金雲翹傳』は、越南で受容され越南を代表する文学作品に高められた。その後、越南から海沿いに中国に逆輸入され、口承文芸として中国南方の地域に広まることとなった。日本でも、滝沢馬琴の『金魚傳』に翻案され、一定の読者を確保した。翻案の背景として、主人公の再三の辛苦、起伏に富む作品構成が馬琴の目に止まり、出版業としての採算がとれると判断したことが考えられる。朝鮮に関しては、『金雲翹博』と類似した書名の存在は確認し得たもののその具体的受容について今のところ資料はなく、継続した調査が必要である。 以上の二例のように、その受容と展開は、個々の作品によって相違をみせ、出版を取り巻くそれぞれの文化の相違との強い関わりを指摘し得る。 同時に、朝鮮、日本、越南が輸入した版本の収集につとめ、その相違から中国文化受容の実体と傾向を分析すべく、才子佳人小説の版本整理およびデータベース化を進めている。
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