2003 Fiscal Year Annual Research Report
漢字の古写本にみる書式の定形化と初期の印刷物の図様および版式に関する調査研究
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13021253
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
赤尾 栄慶 独立行政法人国立博物館, 京都国立博物館・学芸課, 保存修理指導室長 (20175764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
泉 武夫 独立行政法人国立博物館京都国立博物館, 京都文化資料研究センター, 資料管理室長 (40168274)
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Keywords | 高麗版大蔵経 / 初雕本 / 開宝蔵 / 高麗写経 |
Research Abstract |
本年は、主に漢字の古写本の定形化を考える上で重要な高麗版大蔵経初雕本と高麗写経の書誌学的研究を実施した。 高麗版大蔵経の初雕本は、高麗国が侵攻してきた契丹の退却を祈願するために、中国・北宋時代の勅版大蔵経(開宝蔵)を底本として顕宗2年(1011)から75年余を費やして覆刻雕造されたものであるが、その板木が金軍の侵攻に遭って消滅したこともあり、高麗版大蔵経の初雕本の遺品の数はかなり少なくなっている。 それらのうち、大韓民国ソウル市で、誠庵古書博物館所蔵の『瑜伽師地論』巻第八や湖林博物館所蔵の『阿毘曇毘婆沙論』巻第十七などの詳細な調査を実施した。その結果、一紙の縦が29cm余、横が46.0cmから47.9cmの大きさであり、毎版ごとに一行14字詰、一紙には23行となっていることや中国・北宋時代に倣って、「敬」や「竟」などの最後の一画を書かない避諱欠筆が行われていることも明らかとなった。また誠庵古書博物館所蔵の『瑜伽師地論』巻第八には、くっきりとした角筆で、種々の符号が付されていることを確認し、それらの調査を実施した。 また高麗写経については、折本装で高麗時代14世紀の書写と見られる紺紙銀字『華厳経』巻第三十七(湖林博物館所蔵)は、巻首2折分に稠密な変相図が描かれており、経文部分の一紙の規格が一折12行、一紙36行の形式となっており、一紙の縦は30cm、横は65cm余の比較的大きな料紙を使用していることを確認した。また同じく同博物館所蔵の紺紙銀字『華厳経普賢行願品』・『金剛般若経』は二経合巻となっており、縦17.5cm、横8.6cmという小形の写経であることに加えて、奥書から「洪武壬子(1372)正月日」に書写されたことが明らかな遺品であることが知られる。
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Research Products
(1 results)