2001 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡反応場における運動リズムのシンクロナイゼーション
Project/Area Number |
13022243
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
中田 聡 奈良教育大学, 教育学部, 助教授 (50217741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 竹子 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (60031556)
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Keywords | 分子シンクロ / 非線形 / 自発的運動 / 界面運動 / 異方性 / 非平衡 / 界面張力 / 同調現象 |
Research Abstract |
プラスチックの船に樟脳粒子を付着した樟脳船は、樟脳のない船首と樟脳のある船尾間の表面張力差を駆動力として自発的な運動を示す。また、樟脳船の運動は、エネルギーの流入と流出を利用した非平衡開放系である。本研究では、この非線形素子の結合による同調現象の実験と計算機シミュレーションを行った。具体的には、2隻の樟脳船を円水路に浮かべて観測する実験を行った。 まず水相の温度が288K以下の場合、2隻の樟脳船はある位相差を保ちながら進行した(locking mode)。この位相差は2隻の樟脳船の速度比に依存した。例えば2隻の船が等価な場合、その速度も等しいことから、位相差はπ(rad)であった。次に水相の温度が298K以上の場合、位相差が振動した(oscillatory mode)。例えば2隻の船が等価な場合、位相差πを中心に振幅π/2、周期50秒の振動が見られた。これについては、低温の場合、船αの船尾から船βの船首までの樟脳膜の濃度勾配と船βの船尾から船αの船首までの濃度勾配は等しくかつ保たれるため、位相差が一定の等速運動をする。それに対して高温における等価な船の場合、展開された樟脳膜は昇華しやすいので、2隻の船の距離が近づくと後方の船は減速し、離れると前方の船を感知しないので加速する。このようなメカニズムでlocking modeとoscillatory modeが出現する。 以上の実験結果をもとに計算機シミュレーションにより温度に依存したモード変化を再現した。理論式は基本的に2つの式で構成される。1つはニュートンの運動方程式であり、これには駆動力である表面張力、粘性抵抗、及び2隻の船の結合項が含まれる。もう1つの式は、樟脳膜の界面における拡散方程式を基本としており、樟脳粒からの膜の展開、拡散、及び昇華の項が含まれている。そしてこの2つの式は表面張力と樟脳膜の濃度勾配との関係で結合されている。これらの式を用いて昇華速度kを変化させたところ、kが大きい場合oscillatory modeを、kが小さい場合、locking modeをそれぞれ再現することに成功した。このような計算機シミュレーションの構築は、モデルの普遍性や新たな実験設計への展開のために大変重要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] S.Nakata, K.Neya, K.K.Takemura: "Non-linear dynamic responses of a semiconductor gas sensor : Competition effect on the sensor responses to gaseous mixtures"Thin Solid Films. 391. 293-298 (2001)
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[Publications] S.Nakata, K.Takemura, K.Neya: "Chemical sensor based on nonlinearity : Principle and application"Analytical Sciences. 17. 365-373 (2001)
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[Publications] S.Nakata, Y.Hayashima, T.Ishii: "Self-motion of a camphoric acid boat as a function of pH of aqueous solutions"Colloid and Surfaces. A182. 231-238 (2001)
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[Publications] Y.Hayashima, M.Nagayama, S.Nakata: "A camphor grain oscillates while breaking symmetry"Journal of Physical Chemistry. B105. 5353-5357 (2001)
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[Publications] M.I.Kohira, Y.Hayashima, M.Nagayama, S.Nakata: "Synchrorized self-motion of two camphor boats"Langmuir. 17. 7124-7129 (2001)
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[Publications] S.Nakata, H.Kitahara, A.Terada, T.Matsuyama: "Mode-switching in the flow of water into a cup"Chemical Physics Letters. 351. 379-384 (2002)