2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13024231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
浪越 通夫 東京水産大学, 水産学部, 教授 (30189196)
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Keywords | キヒトデ / 自切 / 自切促進因子 / APF / 神経系 / 体腔液 / ペプチド |
Research Abstract |
ヒトデ類には、捕食者の攻撃や物理的障害で傷ついた腕を切断(自切)する能力を持つ種類がいる。人為的に自切させることができ、その際に得られる体腔液を同種のヒトデの腕に注入すると、その腕を自切する。その体腔液中には自切を誘導する物質(自切促進因子、APF)が含まれていると推定された。 今年度はキヒトデのAPFの安定性や化学的性状、生物検定法、最適な被験キヒトデの選別法の実験を行った。青森県陸奥湾のキヒトデを76℃で3分間熱して自切させ、その体腔液を他のキヒトデの腕に注射したら、その腕を自切した。個体の大きさで投与量や自切の時間が異なるが、幅長5cm前後のものが生物検定に最も有効であった。凍結乾燥物は、敏感に反応する個体に対して2mgで自切を誘導した。試料を注入する位置は、腕の先から約3分の2が最適であった。生物検定試験で問題となったのは、生殖時期のキヒトデが自切しにくいことである。生殖時期にはホルモン等の影響で自切が抑制されていると考えられる。 キヒトデは放射神経の切断により自切する。逆に、麻酔作用を持つ化合物で自切が阻害されるので、自切には神経系が関与していると考えられた。そこでキヒトデを口側(神経系を持つ)、反口側、消化管、体腔液に分け、それぞれを76℃に熱して活性を検討したところ、口側から得られた液のみが自切を誘導した。よって、APFは神経系と何らかのつながりを持つと推定した。 APFを含む溶液は4℃、3時間で失活した。凍結乾燥物は-30℃で1ヶ月から数ヶ月間安定に保存できる。プロテアーゼ処理で活性は著しく弱くなるが、グリコシダーゼでは失活しない。限外ろ過により分子量は3,000以下であることがわかった。よって、キヒトデのAPFは比較的低分子量のペプチドであると考えられる。そこで、ゲルろ過やHPLCでキヒトデのAPFの分離を行っている。
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