2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13024238
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小鹿 一 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (50152492)
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Keywords | 疫病菌 / Phytophthora nicotianae / αホルモン / 有性生殖 / 糸状菌 / 卵菌 / 構造解析 |
Research Abstract |
有性世代を持つ疫病菌(Phytophthora sp.)の有性生殖誘導物質「αホルモン」の分離と構造解析を目指して化学的研究を行った。まずタバコ疫病菌P.nicotianaeを用い、交配型のひとつA1株が分泌し別の交配型A2株に有性生殖を誘導する物質「α1ホルモン」の探索を行った。α1ホルモン活性の評価は、A2株コロニー付近にA1株抽出物を含むペーパーディスクを置き4日間培養し、有性生殖の結果生じる卵胞子数を計測することで行った。α2ホルモン活性はA1株とA2株を入れ替えることにより同様に評価した。 初期の研究段階では固体培養によりα1ホルモンの探索を行った。すなわちA1株の寒天培地培養物約75L(シャーレ3750枚)分をアセトン抽出、溶媒分配し、EtOAc画分を2段階のクロマトグラフで分画後、HPLCで精製し、約10ng/diskで活性を示すα1ホルモン画分0.1mgを得た。しかし、本物質は極微量成分のため構造決定には至らなかった。次いで液体培養によるα1ホルモンの生産を検討したところ、振盪培養により固体培養と同等の生産性と培養期間の短縮化を実現できた。この結果、培養の大量化と抽出の簡略化により生産効率が格段に向上した。これまでに約400Lの液体培養(フラスコ400本)を行い、EtOAc抽出、カラムクロマト、HPLC分離を経て、2種の活性画分α1-I,α1-IIをそれぞれ0.2mg,0.1mgの収量で得ることに成功した。これらはそれぞれ10ng/disc,3ng/discの投与でα1ホルモン活性を示した。 これらα1ホルモン画分は未だ数種の成分から成っていたので、NMR, LC/MSなどの分析手段を駆使して、構造式の特定を行っている。一方、A2株が分泌するα2ホルモンについては、抽出操作により失活することから、分離条件の確立を進めている
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