2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13027211
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
門田 朋子 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (00089864)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 直二 千葉大学, 大学院・医学研究院, 講師 (00188822)
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Keywords | 内分泌攪乱物質 / 中枢神経系 / diethylstilbestrol (DES) / 海馬 / マウス / 新生仔期 |
Research Abstract |
本研究ではマウス新生仔を用いて、発達期の脳が外来性の内分泌撹乱物質に曝露された場合、大脳の海馬領域の神経細胞がどのような影響を被るかについて明らかにすることを目的とした。海馬は記憶・学習に関る重要な領域であるが、近年ここのCA1、CA3層の錐体細胞にエストロゲンレセプター(ERα、ERβ)が新生仔期に一過性に発現することが報告されるようになった。このことは作用強度の差こそあれ、エストロゲン様作用を持つ内分泌撹乱物質が、この時期の海馬錐体細胞に作用した場合、正常発達を妨げるような影響を及ぼし、記憶・学習能力の発達の障害となり得る可能性を示唆するものである。これが内分泌撹乱物質の神経系発達への影響としてまず第一に海馬を取り上げる理由である。 実験方法: 雄マウス(C57Black)に生直后から5日間連続して、DES(diethylstilbestrol)3μg/mouse/day、またはエストラジオール(E_2)3μg/mouse/dayを投与し、1,4,8週令の脳、とくに海馬の形態形成過程を経時的に検索した。ERα、ERβの免疫組織化学による検索も併せて行った。 成果と討論: 1.体重及び脳重増加に対する影響:体重増加はコントロール>DES>E2の順で、処置群では著明な発育不全を示した。脳発達も影響を受け、8週令で正常の約3/4程度に留まった。 2.海馬における組織学的変化:CA1領域の錐体細胞層はコントロールに比べ処置群で細胞数の明らかな減少が認められた。またERβの発現については処置群でかなり著明な発現低下を示した。ERαについては著明な変化は認められなかった。 以上のことから、新生仔期に与えられた外来性のエストロゲンまたはDESは個体の発育不全を引起すのみならず、脳神経系の発達にも大きな影響をもたらすことが明らかとなった。海馬領域の錐体細胞もその成熟過程や層形成過程に障害を受けていると考えられる。この発達障害がERα、またはERβを介したものであるか、DESそのものの作用によるのかについてはERノックアウトマウスなどを用いたさらなる検索が必要である。
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