2001 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌撹乱物質の低用量効果のメカニズムとしてのGnRHニューロンのシナプス形成
Project/Area Number |
13027217
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡辺 知保 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (70220902)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大谷 律子(金子 律子) 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (00161183)
|
Keywords | 内分泌撹乱物質 / ノニルフェノール / ビスフェノールA / ジエチルスチルベストロール / 視床下部 / シナプス / シナプシン / 行動影響 |
Research Abstract |
胎生期ラット視床下部から分離した初代培養細胞を用い,神経細胞のシナプス形成に内分泌撹乱物質が及ぼす影響を検討した.培養液に代表的な内分泌撹乱物質であるノニルフェノール(NP)およびビスフェノールA(BPA)を添加し,細胞の成長の指標であるMAP2およびシナプス形成の指標であるシナプシンに対する抗体で細胞を染色し,共焦点レーザー顕微鏡による画像を画像解析することによって,シナプス形成への影響を定量的に評価した.その結果,10〜100nMのNPによって,細胞の成長,シナプス形成ともに促進され,MAP2/シナプシンとして求めたシナプス密度も促進された.しかし1,000nM以上ではこれらの指標は逆に抑制され,全体として逆U字型の用量-反応関係が得られた.BPAでも同様の用量-反応関係を得たが,各指標に促進の見られた濃度はNPの約100倍であった.この系にはエストロゲンβ受容体の発現が確認されたこと,エストラジオールによつてもMAP2,シナプシン発現が促進されたことから,NP, BPAの作用がエストロゲン受容体を介する可能性が示唆された. 一方で,行動レベルの評価方法を検討するため,やはり代表的な内分泌撹乱物質であるジエチルスチルベストロール(DES)をマウス胎仔期後期から新生仔期にかけて母体を介して曝露(経口投与;0.3あるいは3μg/kg/day)し,出生した仔の成熟後のオープンフイールド活動量と受動回避反応を測定した.その結果、DES曝露はオープンフィールド活動量(移動距離)をオス・メス共に用量依存的に増加させた.また,記憶・学習能力を評価するための受動回避反応については,オスにおいてのみ用量依存的な学習の抑制が認められた.現在、性行動と攻撃行動の観察を継続中であり,将来的にはこの陽性対照処理を用いて,NP・BPAの行動影響を評価する予定である.
|