2003 Fiscal Year Annual Research Report
内分泌攪乱物質のヒトへの影響を外挿するためのサルを用いた分子的疫学的リスク評価
Project/Area Number |
13027240
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅岡 一雄 京都大学, 霊長類研究所, 助手 (10089138)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 邦夫 京都大学, 霊長類研究所, 助教授 (60158623)
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Keywords | 内分泌攪乱 / サル動物モデル / ヒトへの外挿 / DNAチップ / cDNAライブラリー / 胎児影響 / 脳 / 発現遺伝子 |
Research Abstract |
内分泌攪乱物質のヒトへの影響を外挿するためサルを用いて分子的疫学的にリスク評価を行った。 ダイオキシン(TCDD)のサルにおける体内移行は多くの臓器に取り込まれた。胎児への移行は胎盤を経由して移行し多くの臓器に取り込まれた。TCDDの移行による臓器影響について遺伝子発現の変動から研究した。CYP1A1の発現において乳腺、皮膚、腎臓で数倍増加し、膵臓、肝臓、脳では微増し、心臓、肺、甲状腺、卵巣では変動が検出されなかった。発現の変動はTCDDの臓器移行量に依存して増加した。TCDD移行の大きい乳腺においてはTCDDに依存して16個の遺伝子に発現増加があり17個の遺伝子に発現減少が検出された。 野生群および飼育群のサルから血液中のダイオキシン量を調査した。両群からは多くの異性体が検出され、TEQにはポリ塩化ジベンゾフランとコプラナポリ塩化ビフェニルが多くを占め、ポリ塩化ジベンゾパラダイオキシンは低含量であった。 サルに発現する遺伝子の構造解析からヒトとの類似性を評価した。サルのcDNAライブラリーから約3千個のクローンを得て塩基配列ののちBlast検索による比較を行い、サルの発現遺伝子は分子構造において94%、発現頻度において96%、平均して94%のヒトとの類似性を示した。 ヒトへの外挿としてサルを用いる有用性が他の実験動物を上回り明確となった。臓器に移行したTCDDの遺伝子発現の攪乱が解明され、健康被害を受けやすい下地が形成されると推測された。胎児に経胎盤で内分泌攪乱物質が取り込まれたことから、胎児における次世代環境は検討すべき今後の重要な課題と示された。サルの遺伝子構造解析はDNAチップなどとして胎児影響を網羅的に研究する基盤としなる可能性が示された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Asaoka, K., Iida, H., Suzuki, J., Watanabe, K., Inoue, M., Fukusato, T., Murata, N., Nomizu, M., Nagata, R., Kubota, S.: "Gene expression disorder in various tissues in rhesus monkeys treated with 2,3,7,8- tetrachlorodibenzo-p-dioxin vis subcutaneous single injection"Organohalogen Compounds. 64. 423-426 (2003)