2001 Fiscal Year Annual Research Report
強相関ソフトマテリアルの動的エントロピー制御とマクロ相分離
Project/Area Number |
13031010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 肇 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (60159019)
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Keywords | 強相関ソフトマテリアル / マクロ相分離 / リサイクル / 動的エントロピー制御 / 自己組織化 / 流動有機トポロジカル転移 / 外場効果 / 非平衡構造 |
Research Abstract |
粘弾性相分離現象とは、高分子溶液系で発見された新しいタイプの相分離現象であり、相分離の過程で少数相である高分子リッチ相が連結したネットワーク構造が形成されるという、通常の流体系の相分離現象とは全く異なつた特徴を持つ。我々はこれまで、相分離初期に起こる過渡的ゲル化現象こそが、粘弾性相分離現象の本質であることを明らかにしてきた。本研究では、これまでの研究を発展させ、粘弾性相分離の発現機構に関するより詳細な知見を得ることを目的とする。 試験管に高分子溶液を入れ相分離を発生させたところ、化学ゲルの体積収縮転移のように高分子リッチ相は全体的に収縮し、さらに時間が経つと重力の影響によつて試験管の底の方へとつぶされていくことが分かつた。これは粘弾性相分離における過渡的ゲルの形成とその形態緩和を表している。そこで、透過光強度の時間変化の測定などにより、高分子リッチ相に変化が生じた時間を決定したところ、それはクエンチ温度に比例し増大することが明らかになった。この関係は粘弾性相分離における弾性的効果の温度依存性を見積もる上で重要な関係となる。 また我々は、粘弾性相分離現象は高分子系特有の現象ではなく、コロイド分散系のように成分間の動的性質が大きく異なる系(動的に非対称な系)において起こるものと考えている。このことを示すために、コロイド粒子間の流体力学的相互作用を取り入れた新しい数値シミュレーション手法(流体粒子ダイナミクス法)を開発し、コロイド分散系の凝集過程に関する研究を行った。その結果、コロイド粒子が凝集する際、系はネットワーク構造を形成し、この構造が壊れるまで系はゲル的に振舞うことが分かった。これは、コロイド分散系のような内部自由度の無い系でも粘弾性相分離が起こることを示唆し、我々の提唱する動的に非対称な系における相分離挙動の新しい普遍性クラスの存在を支持する結果である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hajime Tanaka, Shinsaku Takagi: "Phase-coherent light scattering spectroscopy. I. General principle and polarized dynamic light scattering"Journal of Chemical Physics. 114-14. 6268-6295 (2001)
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[Publications] Shinsaku Takagi, Hajime Tanaka: "Phase coherent light scattering spectroscopy. II. Depolarized dynamic light scattering"Journal of Chemical Physics. 114-14. 6296-6295 (2001)
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[Publications] Hajime Tanaka: "Interplay between wetting and phase separation in binary fluid mixtures : roles of hydrodynamics"Journal of Physics : Condensed Matter. 13-21. 4637-4674 (2001)
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[Publications] H.Nakazawa etal: "Phase separation and gelation of polymer-dispersed liquid crystals"Computational and Theoretical Polymer Science. 11-6. 445-448 (2001)
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[Publications] Hajime Tanaka, Yohei Nakanishi, Naoko Takubo: "Nonuniversal nature of dynamic critical anomaly in polymer solutions"Physical Review E. 65-2. 021802 (2002)
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[Publications] Tsuyoshi Sonehara, Hajime Tanaka: "A new method of scattering-angle scanning for optical beating light scattering spectroscopy"Review of Scientific Instruments. 73-2. 263-269 (2002)