2002 Fiscal Year Annual Research Report
包接相転移現象を利用したナノ複合材料の構築とそのリサイクル
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13031011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 耕三 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (00232439)
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Keywords | 超分子 / 包接錯体 / トポロジカルゲル / 線状高分子 / 8の字架橋点 / 滑車効果 / 準弾性光散乱 / ナノテクノロジー |
Research Abstract |
シクロデキストリンと高分子を機能ユニットにもつポリロタキサンは包接による超分子構造を用いた強相関ソフトマテリアルの代表例である。我々は大分子量のポリロタキサンの合成に成功し、さらにこのポリロタキサンを用いて物理ゲルでも化学ゲルでもない新しい種類のゲル「トポロジカルゲル」を実現し、注目を集めている。トポロジカルゲルは線状高分子が「8の字架橋点」を貫いてネットワークを形成している。これまでに実験的にトポロジカルゲルが最大で20倍近いきわめて優れた伸張性を示し、水中では乾燥重量の6,000倍に膨潤するなど従来にない特性を確認している。 本研究では準弾性光散乱法により8の字架橋点の熱揺らぎ運動の観察を試みた。従来、化学ゲルの準弾性散乱測定では一般にネットワーク上を疎密波が伝搬する協同拡散モードのみが観察される。しかしトポロジカルゲルでは2つの異なる緩和モードが観察される。我々はポリロタキサン溶液およびポリロタキサンの分解過程の分布関数と比較して、トポロジカルゲルの2つの緩和モードが速いほうから協同拡散モード、8の字架橋点のスライディングモードであることを明らかにした。 トポロジカルゲルの滑車効果がゲルの微視的均一性に及ぼす寄与を検証するため、我々は中性子小角散乱法(SANS)によりトポロジカルゲルの測定を行った。その結果、通常の化学架橋ゲルとは正反対に架橋密度の増大に伴って散乱強度が減少することが見いだされた。また膨潤度を増大させると散乱強度が減少するという、化学ゲルとは逆の傾向が観測された。これは架橋点が自由に移動できる構造を持つために系内部の不均一性が緩和されたためであると考えられる。これらの実験結果はトポロジカルゲルが8の字架橋点の移動する自由度の大きなゲルであり、その滑車効果により自在に不均一性を解消していることを示す明確な証拠といえる。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 奥村泰志: "トポロジカルゲル-物理ゲルでも化学ゲルでもない第3のゲル-"高分子. 51・4. 252-252 (2002)
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[Publications] 伊藤耕三: "ポリマー性超分子-環状分子を用いた高分子のナノ構造制御-"日本物理学会誌. 57・5. 321-329 (2002)
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[Publications] 伊藤耕三: "ソフトマテリアルのナノ構造"数理科学. 464. 60-65 (2002)
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[Publications] 奥村泰志: "線状高分子と8の字架橋点から成る第三のゲル「トポロジカルゲル」"未来材料. 2・12. 32-39 (2002)
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[Publications] Kohzo Ito: "Advanced Macromolecular and Supramolecular Materials and Process"Kiuwer Academic / Plwnum Publishers, New York. (2003)