2003 Fiscal Year Annual Research Report
包接相転移現象を利用したナノ複合材料の構築とそのリサイクル
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13031011
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 耕三 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (00232439)
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Keywords | ソフトマテリアル / 高分子 / シクロデキストリン / ゲル / トポロジカル超分子 / 中性子散乱 |
Research Abstract |
揺らぎの大きな多自由度系における協同的秩序化現象の中にあって、エントロピー的強相関が決定的な役割を演じる2つの分子のペアとして、環状分子と線状高分子の組み合わせがある。我々はこれまで、α-CDまたはα-CDを1次元的に連結したシクロデキストリンチューブと線状高分子の包接・解離挙動を実験・理論両面から研究し、ナノスケールの超分子構造体たとえばトポロジカルゲルや分子被覆導線などを作成してきた。線状高分子はナノチューブに包接されると、コイル状から棒状にその形態を大きく変化させる。このとき形態エントロピーが大きく減少することから、この系は温度に対してナノスケールの構造が転移的に変化する強相関2分子系となる。本研究の目的は、環状または管状分子と線状高分子を単位とした2元分子材料を作成し、ナノレベルの構造・物性がマクロに影響を及ぼすような強相関ソフトマテリアルの実現することにある。 我々は、疎に包接したポリロタキサン上の環状分子のみを架橋することにより、架橋点が自由に動く強相関ソフトマテリアル材料環動ゲルの作成に成功した。また、環動ゲルの力学的特性を詳細に調べたところ、環動ゲルの応力-伸長曲線が、化学ゲル・物理ゲルと定性的に異なることを見出した。これは、環動ゲル内の架橋点が自由に動けるために、力学的には高分子は1本のままとして振る舞う結果と考えることができる。この協調効果は1本の高分子内にとどまらず、架橋点を介して繋がっている隣り合った高分子同士でも有効なため、ゲル全体の構造および応力の不均一を分散し、高分子の潜在的強度を最大限に発揮することが可能になっている。架橋点が滑車のように振る舞っていることから、この協調効果を「滑車効果」(Pulley effect)と名付けた。 また、中性子小角散乱を測定し、伸長時に架橋されたゲルとしては始めてノーマルバタフライパターンを観察することに成功した。これは、環動ゲルの架橋点が自由に動くために、ゲル内部の不均一な構造・ひずみが緩和された結果である。以上のように、本研究では環状分子と高分子が強く相関した環動ゲルを開発し、その特性を明らかにすることに成功した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 伊藤耕三: "Nanostructures formed by combination of nanotube and polymer chains"Macromolecular Symposia. 201. 103-110 (2003)
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[Publications] 下村武史: "Circular dichroism study of the inclusion-dissociation behavior of complexes between a molecular nanotube and azobenzene substituted linear polymers"Journal of Inclusion Phenomena and Macrocyclic Chemistry. 44. 275-278 (2003)