2002 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内シグナル伝達系による中枢ニューロンの興奮性調節メカニズム
Project/Area Number |
13035051
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
坪川 宏 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (30227467)
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Keywords | シグナル伝達 / 神経科学 / 生体分子 / 生理学 / 脳・神経 |
Research Abstract |
マウス海馬スライス標本のニューロンを用いて以下の実験を行った。 1.シナプス入力によって誘発されるPKCトランスロケーションの検出 海馬スライス標本においては、シャッファー側枝・交連線維の頻回電気刺激による代謝型グルタミン酸受容体の活性化が報告されている(Nakamuraら、1999)。本研究の結果では、海馬CA1野の錐体細胞で電気刺激やCa^<2+>濃度増加に時間的に一致したトランスロケーションを引き起こすには、シャッファー側枝・交連線維の高頻度刺激を5-6回繰り返す必要があり、これはNakamuraらによって報告された刺激条件よりはるかに強い。そこで今回、刺激を加える場所を様々に変え、トランスロケーションが起こりやすい刺激部位を探った結果、海馬上昇層(Stratum Oriens)が有効であることが分かった。海馬上昇層には、中隔核由来で海馬ニューロンにシナプスするアセチルコリン性線維の走行をはじめ、種々のニューロモジュレーターを伝達物質とする入力線維が走行することが知られている。細胞体におけるPKCの活性化には、ムスカリン製アセチルコリン受容体やノルアドレナリン受容体などの活性化が強く関与する可能性が示唆された。 2.樹状突起領域におけるPKCトランスロケーションの検出の試み PKCに結合する蛍光色素fim-1をパッチ・ピペット内に充填し、樹状突起へ適用することにより色素を樹状突起から注入した。樹状突起への色素の充填は速やかに行われ、鮮明な蛍光画像が得られた。しかしながら、細胞体の場合と異なり、薬物刺激、入力線維の電気刺激いずれの方法でも明確な膜へトランスロケーションは認められなかった。海馬ニューロンの樹状突起は微細な構造であるため、通常の光学顕微鏡では空間分解能(特に焦点深度)の点で不十分であると思われた。共焦点レーザー顕微鏡などをもちいて、さらに検討する必要があると考えられた。
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