2002 Fiscal Year Annual Research Report
神経回路網の特異的構築と機能を制御する細胞内分子機構
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13041030
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
斉藤 哲一郎 京都大学, 再生医科学研究所, 助教授 (00202078)
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Keywords | 神経細胞 / 発生・分化 / 神経回路網 / 脊髄 / 哺乳動物 / 転写因子 / ホメオボックス遺伝 / 電気穿孔法 |
Research Abstract |
マウス脊髄の発生過程で特定の細胞群で発現するMBH1(mammalian Bar-class homeobox 1)遺伝子の発現制御と機能を解析した。MBH1の発現は、胎生10.5日のマウス脊髄の蓋板近傍の細胞で始まり、発生の進行とともに、脊髄の背側から翼板下層へ至る帯状の細胞群で認められ、胎生12.5日以降では翼板下層に限局する。この発現を詳細に解析するため、MBH1ゲノムの転写制御領域とレポーター遺伝子のlacZを持つトランスジェニックマウスを作製した。その結果、MBH1の発現は、胎生10.5日に、MATH1発現細胞で始まることが明らかとなった。また、MBH1発現細胞の軸索は、床板を越えて反対側へ伸長し、交連ニューロンのマーカーのDCCやTAG-1の抗体で標識された。この結果、MBH1は交連ニューロンで発現することが示された。さらに、MBH1の転写制御領域に欠損変異や部位変異を導入し、MBH1の発現はMATH1タンパク質が結合するE-boxで制御されることが明らかとなった。 一方、前年度に開発したマウス脊髄へのin vivo electroporation法を利用し、MATH1を強制発現させると、MBH1の発現が誘導された。また、MBH1を異所的に発現させると、本来は脊髄の背側に留まり軸索を同側に投射するニューロンが、翼板下層へ移動し、軸索を床板に向かって投射する交連ニューロンに分化転換することが明らかとなった。この時、分化転換したニューロンの軸索は、本来の交連ニューロンと同様、DCCやTAG-1を発現し、床板を通過後、90度方向転換し頭部へ向かって伸長した。以上の結果、MBH1は、DCCやTAG-1の発現を制御するとともに、軸索の伸長方向や細胞の移動方向を調節し、脊髄交連ニューロンの運命は、MATH1からMBH1へ至る転写因子のカスケードで決定されることが明らかとなった。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Tetsuichiro Saito: "Transcriptional cascade to regulate neuronal differentiation by mammalian Barh1 (MBH1)"Catecholamine research : from molecular insights to clinical medicine. 213-216 (2002)
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[Publications] Atsushi Mikami: "Molecular structure of cytoplasmic dynein2 and its distribution in neuronal and ciliated cells"Journal of Cell Science. 115. 4801-4808 (2002)
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[Publications] Rie Saba: "Mammalian BarH1 confers commissural neuron identity on dorsal cells in the spinal cord"Journal of Neuroscience. 23. 1987-1991 (2003)