2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13041043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 利彦 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (60273851)
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Keywords | 網膜 / 神経分化 / 転写因子 / T-box / 背腹軸 / 網膜視蓋投射 / 位置情報 |
Research Abstract |
網膜は、背腹軸に沿った形態形成を行い、また網膜神経節細胞軸索の中枢神経系(ニワトリでは中脳由来の視蓋)への投射も、同様に背腹軸に沿った位置情報をもとに規則正しく行われる。このようtopopraphicな神経投射が、網膜に結ばれた外界の映像を正確に脳へ伝達する基盤となる。したがって、網膜の背腹軸に沿った位置情報がどのようなメカニズムで構築されているのかを解明することは、きわめて重要な意味を持っており、本研究はその一端をTbx遺伝子の機能解析から明らかにすることを目的としている。 これまでの研究から、網膜背側にはTbx5遺伝子が、腹側にはVax遺伝子が発現しており、背腹軸に沿った形態形成と網膜視蓋投射を調節していることがわかっている。しかし、その後の詳細な検討の結果、Tbx5、Vaxの発現領域にはギャップが存在し、網膜上に連続した位置情報を持たせるには、他の遺伝子の関与があることがわかってきた。本研究による詳細な解析の結果、Tbx3、Tbx2遺伝子が網膜背側に異なった発現を示すことを見いだした。網膜背側からTbx5、Tbx3、Tbx2、Vaxの4つの領域に分かれることがわかり、肢芽で見いだしたように、網膜にもTbx codeが成立しており、種々のTbx遺伝子の発現の組み合わせによって網膜上の連続した位置情報が作られ手いることが示唆された。 網膜視蓋投射の解析は、従来DiIを網膜上に移植して、蛍光ラベルされた視蓋表面の軸索を観察することが行われてきた。しかし、この方法は技術的に煩雑で難しい。これを克服する目的で、レトロウイルスベクターを改良し、これにAlkaline phosphatase遺伝子を組み込んだ物を網膜に電気穿孔法で導入した。その結果、効率よく視蓋表面の網膜神経節軸索をラベルし、可視化することに成功した。 この方法を用いて、Tbx codeが実際に網膜背腹軸上の連続した位置情報を規定できるか検討した。その結果、Tbx5、Tbx3、Tbx2遺伝子を個別に強制発現した場合、導入した遺伝子に特異的な視蓋上の位置に正確に投射していることが確認された。このことから、網膜上にもTbx codeが存在し、3つの遺伝子の発現の組み合わせがtopographicな位置情報の決定に直接関与していると結論された。これは、Tbx遺伝子群の機能を類推する上できわめて重要で、他の組織、器官の形成にも通底する知見となった。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 竹内純, 小柴和子, 小椋利彦: "器官の極性決定とTbx遺伝子"医学のあゆみ. 199,13. 876-882 (2001)
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[Publications] D.Kobayashi et al.: "Early Subdivisions in the Neural Plate Define Distinct Competence for Inductive Signals"Development. 129. 83-93 (2002)