2001 Fiscal Year Annual Research Report
C.elegansの行動遺伝学による感覚情報の選択と可塑性に関わる遺伝子の解析
Project/Area Number |
13041056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
石原 健 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 助手 (10249948)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桂 勲 国立遺伝学研究所, 構造遺伝学研究センター, 教授 (00107690)
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Keywords | 学習 / 情報処理 / 行動 / 遺伝学 / 線虫 |
Research Abstract |
動物は、環境から様々な情報を感覚細胞を通じて受容し、神経回路上で必要な情報を取捨選択・統合し適切な応答をする。我々は、高次の感覚情報処理システムに関わる新しい分子機構を明らかにすることを目的として、C.elegansをモデルとして用いた遺伝学的解析を行っている。 匂い物質・銅イオンのそれぞれに対する応答は正常だが、両者の存在下では野生型に比べ銅イオンからの忌避反応を優先する hen-1 変異体の解析を行っている。この hen-1 変異体は学習にも異常がみられる。野生型では NaCl と飢餓の対提示により走化性が変化し NaCl を忌避するようになるが、hen-1 変異体ではこの変化が小さい。また、線虫は、良い環境のもとでは飼育温度を好むが、飼育温度で飢餓状態におかれると飼育温度を避けるようになる。Hen-1 変異体では、通常のの温度走性は正常であったが、飼育温度で飢餓させても行動は変化せず負の温度走性は見られなかった。一方、飢餓による単純な行動の変化には異常がみられなかったことから、学習過程に異常があると考えられた。Hen-1 変異体の原因遺伝子は、LDL 受容体リガンド結合ドメインを持つ新規の分泌タンパク質をコードしている。この分子は二つの神経でのみ発現し、神経小胞と同じ機構で軸索へ運ばれる。さらに、この分子は成熟した神経回路において細胞非自律的に働くことがわかった。本年は、hen-1 遺伝子内部に欠失のあるtm501変異株を単離した。この hen-1(tm501)変異体は、正常に成長するので、成虫での行動を解析した。その結果、ミスセンス変異を持つ hen-1(ut236)変異体と同じように感覚情報の選択と学習には異常がみられたが、単なる走化性や飢餓に対する応答は正常であった。今後は、HEN-1 分子と生化学的・遺伝学的に相互作用する分子の探索を通じて、学習の新しい分子機構を明らかにしたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Shioi et al.: "Mutations affecing nerve attachment of Caenorhabditis elegans"Genetics. 157. 1611-1622 (2001)
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[Publications] Kuhara et al.: "Negative regulation and gain control of sensory neurons by the C. elegans Calcineurin TAX-6"Neuron. 33. 751-763 (2002)