2002 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質特異的遺伝子欠損システムを用いたバレル形成分子機構の研究
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13041065
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
岩里 琢治 理化学研究所, 行動遺伝学技術開発チーム, 研究員 (00311332)
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Keywords | 条件的遺伝子欠損マウス / Cre / loxPシステム / 神経活動依存的発達 / 体性感覚系 / 神経科学 / マウス発生工学 / 大脳皮質 / バレル |
Research Abstract |
マウス体性感覚野のバレル形成は、活動依存的神経回路発達のモデルとして注目されてきたが、その分子機構の解明は顕著に遅れている。本研究では、我々自身が開発したシステムを用いて、バレル形成分子機構解明に挑んだ。本年度は、2つのことを行った。(1)大脳皮質特異的なNMDAR下流候補遺伝子欠損マウスの作製。相同組換えによってloxPが標的遺伝子を挟む形で導入されたESクローンを同定し、キメラマウスを作製。3種類の系統において生殖系列への伝達を確認。受精卵にflp組換え酵素を導入し、FRT配列によって挟まれた薬剤耐性マーカー遺伝子を除去。我々が以前作製したEmx1-Creマウスと交配し、大脳皮質特異的遺伝子欠損マウスを作製中。(2)大脳皮質特異的NMDAR1欠損(CxNR1KO)マウスの解析。このマウスでは、視床-皮質軸索終末から構成されるプレシナプスパターンが、完全ではないが形成される。生後間もないマウスでヒゲからの入力を変化させ、プレシナプスパターンの可塑性を定量し、それが正常であることを発見。これは、従来の薬理学による結論を覆すものである。CxNR1KOマウスでは、第4層神経細胞の細胞体からなるポストシナプスパターンが形成されない。この細胞レベルの原因を調べる目的で、樹状突起の形態を解析。正常マウスの体性感覚野第4層の興奮性神経細胞の樹状突起は、非対称的にバレル中心に向かって伸びる。それに対して、CxNR1KOマウスでは、非対称性が顕著に減少していた。樹状突起の長さの総計は長くなるが、樹状突起の発達の全体的な促進ではなく、枝分かれが増え、複雑さが増大することによっていた。さらに、スパインの密度にも有意な増大が見られた。これらの結果から、NMDARが樹状突起の方向性選択により、ヒゲとバレルの1対1対応を作り、それによってバレル形成が始まるということが示唆された。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Datwani, A*., Iwasato, T*+., Itohara, S., Erzurumlu, R.S.+ *The first two authors contributed equally to this work.+The corresponding authors: "Lesion-induced thalamocortical axonal plasticity in the S1 cortex is independent of NMDAR function in excitatory cortical neurons"J. Neurosci.. 22巻. 9171-9175 (2002)
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[Publications] Datwani, A., Iwasato, T., Itohara, S., Erzurumlu, R.S.: "NMDA receptor-dependent pattern transfer from afferents to postsynaptic cells and dendritic differentiation in the barrel cortex"Mol. Cell. Neurosci.. 21巻. 477-492 (2002)