2002 Fiscal Year Annual Research Report
法整備の包括的枠組み(2)司法制度改革の現状と課題
Project/Area Number |
13123206
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
戒能 通厚 早稲田大学, 法学部, 教授 (00013011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新美 育文 明治大学, 法学部, 教授 (80022432)
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Keywords | 市場経済化 / 司法改革 / 権利形成 / 土地使用権 / 伝統力 / household / 土地問題 / 体制移行 |
Research Abstract |
市場経済化の影響に伴う「体制移行国」において司法がどのような条件と社会の構造変容に規定されつつ生じてくるかの問題に、「司法改革」の「発生論的」分析は帰着しよう。そこには社会主義システムの構造を維持しようという「政治力」と、権利実現システムに純化しようとする司法の「権利形成力」が複雑に絡み合う関係が認められるのであり、しかもこの対抗においてしばしば、当該社会に伝統的に内在していた「伝統力」が、前者を補完する関係で現れつつ、未だ個人が法主体たり得ていない当該社会で、それはまた、「権利形成」促進的にもその逆にも作用する。 このような観点から、今年度は、現在、民法典の改正作業が本格的に展開しているベトナムにおいて、土地法が認める土地使用権について調査研究を実施した。すなわち、「政治力」と「権利形成力」および「伝統力」の相互の関係を具体的に探り、市場経済化によって司法がベトナムの固有の文脈においてその自立性を確立する可能性を探ることにしたのである。そしてhousehold単位に認められた土地使用権がとりわけ都市部において高度に商品化し、「政治力」に抗して使用価値支配的にではなく、たんに交換価値支配の権能に転じていくとき、司法が未だなお「政治力」の下にあって自立性をも持ち得ていない状況下で発生する「土地問題」の固有の論理を解明しようと試みた。ことに、人民委員会(行政ないし政治)と人民裁判所の管轄権やその相互の関係が司法改革の大枠における進展といかなる関係を有するかを見てきたわけであるが、ここで地域的な住民の共同性を担保するものが、社会主義的なシステムに代わって生成する可能性があるか否かを解明することの重要性が明らかになった。司法改革が住民主体の地域性と結合する可能性はほとんど認められないが、土地使用権の「私権化」の確立のありようによっては、両者の結合が生まれる可能性は皆無ではないであろう。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 戒能 通厚: "総論的問題提起"法律時報. 74巻11号. 50-56 (2002)
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[Publications] 戒能 通厚: "司法改革との接点を求めて"比較法学会・比較法研究. 63号. 82-87 (2002)
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[Publications] 戒能 通厚: "法の継受と移植の法理論"文科省科研特定会議研究(司法改革班)ワーキングペーパー. 1号. 12-21 (2002)
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[Publications] 戒能 通厚: "法整備支援と比較法学の課題"早稲田大学比較法研究所叢書. 30号(未定). (2003)
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[Publications] 戒能 通厚ほか: "ベトナムにおける司法の生成と土地使用権(仮題)"文科省科研特定領域研究(司法改革班)ワーキングペーパー. (未定). (2003)
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[Publications] 戒能 通厚(編): "現代イギリス法事典"新世社. 415 (2003)