2002 Fiscal Year Annual Research Report
環境汚染物質やシグナル伝達物質を分解する酸素添加酵素の設計原理解明と指向進化
Project/Area Number |
13125202
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
堀池 喜八郎 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (80089870)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 隆英 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (70167378)
田中 裕之 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (10293820)
石田 哲夫 滋賀医科大学, 医学部, 助教授 (10176191)
喜田 昭子 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (70273430)
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Keywords | 酸素添加酵素 / 酵素反応機構 / 非ヘム鉄 / 電荷移動錯体 / 結晶構造 / カテコール2,3-ジオキシゲナーゼ / カテコール / ニトロフェノール |
Research Abstract |
本年度は、カテコール誘導体のカテコール環を開裂する一群の非ヘム2価鉄酸素添加酵素の結晶構造解析と機能解析を系統的に実施した。その結果、カテコール2,3-ジオキシゲナーゼ(Mpc)を代表とする酸素添加酵素の活性部位設計の共通原理とそれに基づく触媒機構の概要を解明できた。 (1)4位置換カテコールを基質とする酸素添加酵素2種類、3位にフェニール基のような大きな置換基を持つカテコールを基質とする酵素2種類、以上の4種類とは独立に進化してきた5位にカルボキシル基を持つカテコールを基質とする酵素1種類、これら5つの酵素の活性部位の構造を比較した。ES複合体で、カテコール環の1位のOH基を固定するヒスチジン残基と水分子、2位のOH基からプロトンを奪い、O^-基として固定するヒスチジン-グルタミン酸対とチロシン残基の存在が明らかになった。これらが、2-His-1-COO^-モチーフで固定された2価鉄イオンとともに触媒機構の構造的基盤となる。様々な酵素の多様な基質特異性は、この中心場へのカテコールモノアニオンの2座配位に際する3〜6位に対する立体障害の多様性として単純明解に理解できることが分かった。 (2)Mpcは、3および4位置換カテコールに対する基質飽和・酸素飽和での反応速度定数が実験的に精密測定できる唯一の酵素である。電子吸引性及び電子供与性の置換基を3、4位に持つカテコールの第一解離のpK_aら値を嫌気滴定で求め、pK_a値と速度定数との関係を解析した。触媒中心活性は、置換基の電子吸引性と強く相関し、その増大ととも低下した。これは、ESO_2からのラジカル反応による酸素分子の2位炭素への付加とそれに引き続くアルケニル移動による環状ラクトン中間体の形成という反応モデルを定量的に検証する初めての実験結果である。 (3)最も精密な立体構造解析が進んでいるのに機能解析が難航している3-フェニールカテコールを基質とする酵素(BphCKKS102)について、その大量精製と機能解析に成功した。BphCKKS102は、3位置換カテコールのみを基質とし、4位置換カテコールは強力な阻害剤となることが分かった。さらに、3位置換カテコールに対する反応速度定数がMpcと比較できる精度で測定できた。 これらの成果から、Mpcを出発にして、合理的な機能改変と反応機構の検証を進め、同時に基質特異性や安定性の異なる様々な酵素の触媒活性を統一的に理解できる可能性が開け、現在、その方向で研究を進めている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Hirofumi Nakajima: "Accurate measurement of near-micromolar oxygen concentrations in aquious solutions based on enzymatic extradiol cleavage of 4-chlorocatechol : Applications to improved low-oxygen experimental systems and quantitative assessment of back diffusion of oxygen from the atmosphere"J. Biochem.. 131. 523-531 (2002)
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[Publications] Tetsuo Ishida: "Structure and reaction mechanism of catechol 2,3-dioxygenase"Excerpta Medica ICS. 863(印刷中). (2003)