2002 Fiscal Year Annual Research Report
ヘムを基礎とする高機能複合たんぱく質の創製とその支援的研究
Project/Area Number |
13125208
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
島田 秀夫 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (80095611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 浩 岡崎国立共同研究機構, 統合バイオサイエンスセンター, 助教授 (80228957)
林 高史 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (20222226)
菱木 貴子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10338022)
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Keywords | 膜タンパク質複合体 / プロトンポンプ / 部位特異的アミノ酸置換 / チトクロム酸化酵素 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
ウシチトクロム酸化酵素はミトコンドリア(Mt)内膜に存在する分子量21万の複合体酵素である。還元型チトクロムcを酸化し、酸素を水に還元するとともに、プロトンをマトリクス側から膜間腔へポンプする。この一連の反応で生じた膜電位とプロトン濃度勾配が、ATPの合成反応を駆動する。本年度、ヒトHeLa細胞を宿主として、ウシサブユニットI(SI)遺伝子を染色体に組み込み、細胞質で発現されたSIをMtに輸送させることによって、ウシとヒトとのハイブリッドチトクロム酸化酵素を発現させることに成功した。 Mtには、mock細胞のMtと同じ量の本酵素が含まれ、そのMt蛋白質当たりのチトクロムc酸化活性も変わらないことが、dodecylmaltosideで可溶化したMtの光吸収スペクトルと活性測定から示された。一方ヒトSIに特異的な抗体を用い、これら細胞では、ヒト酵素がmock細胞の約2割に減少することがわかった。したがって、Mt内でウシ・ヒトハイブリッド酵素が形成されると、それは全体の8割に達し、また、ハイブリッド酵素はヒト酵素と同等の性質をもつことを示す。またミトプラスト(Mp)のシアン感受性チトクロムc酸化活性と、それに共役した脱共役剤感受性のプロトンポンプ活性を測定したところ、野生型ウシSIを含むMpは、両活性ともにmock細胞のMpとほぼ同じであった。この発現系を用いて、SIのAsp51をAsnに置換した変異ハイブリッド酵素は、チトクロムc酸化活性は野生型と変わらないものの、プロトンポンプ活性は消失しており、機能変換を起こした酵素であることがわかった。以上の結果から、チトクロム酸化酵素のポンプ活性に上記アミノ酸が必須であることが判明した。これは、X線結晶構造解析に基づいて提唱された、Asp51の役割を支持する。Asp51は動物の酵素には、保存されているが、バクテリアや植物の酵素では、中性のグリシンなどに置換されているので、今後の検討課題である。
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Research Products
(12 results)
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[Publications] 永野 真吾: "プチダレドキシンの結合によって安定化されるP450camの活性型構造"生化学. 74. 1029 (2002)
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[Publications] 堀 洋: "気質カンファー存在下でのプリダレドキシン・P450cam複合体:EPR、FTIRを用いた解析"生物物理. 42. S60 (2002)
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[Publications] 下方 國稔: "ウシチトクロム酸化酵素のプロトン能動輸送におよぼすAsp51Asn(サブユニットI)変異の影響"生物物理. 42. S62 (2002)
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[Publications] 広瀬 修一: "高いカタラーゼ活性を有する西洋ワサビペルオキシダーゼの作製とそおカタラーゼ活性上昇機構の解明"生物物理. 42. (2002)
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[Publications] Kunitoshi Shimokata: "Asp51Asn mutation of bovine heart cytochrome c oxidase subunit I"Biochimi.Biophys.Acta EBEC Short Report. 12. 105 (2002)
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[Publications] Takashi Hayashi: "Blue myoglobin reconstituted with an iron porphycene shows extremely high oxygen affinity"J.Am.Chem.Soc.. 124. 11226-11227 (2002)
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[Publications] Takashi Matsuo: "Reductive Activation of Dioxygen by Myoglobin : Reactivity of Myoglobin Reconstituted with Flavohemin"J.Am.Chem.Soc. 124. 11234-11235 (2002)
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[Publications] Roman Davydov: "Catalytic Mechanism of Heme Oxygenase Through EPR and ENDOR of Cryoreduced Oxy-Heme Oxygenase and its Asp140 Mutants"J.Am.Chem.Soc.. 124. 1798-1808 (2002)
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[Publications] Hiroshi Fujii: "13C-NMR Signal Detection of Iron Bound Cyanide Ions in Ferric Cyanide Complexes of Heme Proteins"J.Am.Chem.Soc.. 124. 5936-5937 (2002)
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[Publications] Hiroshi Fujii: "Trigonal Bipyramidal Ferric Aqua Complex with Sterically Hindered Salen Ligand as a Model for Active Site of Protocatechuate 3,4-Dioxygenase"Angew.Chemie.Int.Ed. 41. 3638-3641 (2002)
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[Publications] Hiroshi Fujii: "Electronic structure and reactivity of high-valent oxo iron porphyrins"Coor.Chem.Rev. 226. 51-60 (2002)
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[Publications] Takashi Hayashi: "Encyclopedia of Supramolecular Chemistry"Marcel Dekker, New York(In press). (2003)