2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13130203
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金道 浩一 大阪大学, 極限科学研究センター, 助教授 (20205058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂井 徹 東京都立科学技術大学, 工学部, 助教授 (60235116)
萩原 政幸 理化学研究所, 磁性研究室, 副主任研究員 (10221491)
小林 達生 大阪大学, 極限科学研究センター, 助教授 (80205468)
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Keywords | 超強磁場 / 磁化プラトー / 磁化ジャンプ / 金属-絶縁体転移 / パルスマグネット |
Research Abstract |
本年度は、非破壊で80テスラの磁場を発生できる世界最高のパルス強磁場マグネット(通称80Tマグネット)に改良を加え、70テスラまでの磁化測定を常時行えるようにした。また、このマグネットを用いた測定により様々な量子現象を観測した。これまでの80Tマグネットは最内層コイルをマルエージング鋼製のパイプによって補強していた。このマグネットで測定を行うと、パイプに誘起される渦電流がノイズ源となり小さなシグナルの観測が困難であると同時に金属パイプの存在はコイルの絶縁にとっても危険な要素となっていた。そこで、この補強剤を高強度繊維に変えたところ、高感度でかつ安定的に磁化測定を行うことが可能となった。このマグネットを用いて、これまでの磁場では届かなかった領域に存在すると考えられている「磁化プラトー」および「磁化ジャンプ」を捉えることができた。具体的には、BIP-TENOと呼ばれるスピン1/2の梯子鎖でプラトーの終わりが観測できた。結果は、約44テスラから始まる1/4プラトーは65テスラ付近で終わることが分かった。ゼロ磁化状態が約10テスラであるのに対し、1/4プラトーが20テスラの幅を持つことが合理的に説明できるかが今後の課題である。また、BaVS_3は量子スピン系でありながら電気伝導があり、温度を降下させると金属から絶縁体に転移する事が分かっている。この転移温度を境に磁気的性質も変化を示すことから、スピンの量子的な振る舞いが電気的性質に与える影響に興味が持たれている。実際に低温で強磁場磁化測定を行うと、50テスラ付近に「磁化ジャンプ」が観測され、70テスラではほぼ飽和の振る舞いを見せているもののその磁化量は約0.4μ_Bと期待される量の半分である。今後の課題は、この磁化を担ったスピンと伝導を担った電子の関係を明らかにすることである。
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