Research Abstract |
江澤は前年度に引き続き非可換幾何学の観点から量子ホール系を解析した.量子ホール系は最低ランダウ準位に束縛された電子の作る世界で,この世界の電子のx座標とy座標は交換しない,という著しい特徴を持つ.その結果,電子が内部対称性SU(N)を持つ場合,量子ホール系の対称性はW∞をSU(N)拡大したW∞(N)で与えられる.先ず,占有率がv=2の二層ホール系の基底状態を摂動論的に研究した.この系は破れたSU(4)対称性を持つが,SU(4)対称性極限で,基底状態を厳密に求め,3つの相(spin, canted, ppin)があることを示した.更に,SU(4)の破れの効果を考察した.摂動効果でspin相とcanted相の境界は変化をしないことを,一方,canted相とppin相の境界は大きく変化することを示した.又,従来知られていなかった非可換平面上の位相的性質を解明できる可能性がある.また,研究成果は5編の原著論文として国際的著名誌に発表した. 綿村は非可換空間の曲率を持った空間の新しい例として量子化されたCPnの関数環を取り上げ,その上でのゲージ場の配位の解析を行った.複素射影空間が,その複素構造から得られるポアッソン括弧を使って量子化することができるので,さまざまな形の量子化の方法を比較することと,同時に一方で,非可換球面上のバンドルの構成に使われた手法を一般化することで,より複雑な系への応用が可能になる手法が分かってきた.この結果,非可換CPnにおけるゲージ場の配位のうち,磁気単極子に相当する配位の構成に成功したが,トポロジカルな数を求めようとするときに,量子化したのちのある種の部分空間上の積分を定義,実行する必要がある.特に複素射影空間において,この解析を行い,その一部を解決することができチャーン数を具体的に求めることができた.研究成果は1編の原著論文として国際的著名誌に発表した.
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