Research Abstract |
本研究課題は,スマトラにおける赤道大気レーダ(EAR)を中心にして熱帯積雲対流活動を総合的に観測し,対流活動の階層性ならびに対流圏起源の大気波動の振舞いを明らかにすることを目的とする.そのため,風の鉛直プロファイルを観測するEARと同時に気温,水蒸気密度,降雨の鉛直プロファイルや,3次元対流活動を観測する機器,更に様々な地上測器が必要である.平成14年度末までに全ての観測機器の整備を終え,17年度にはそれらの機器による観測を継続した.さらに対流活動による重力波励起を調べるため,平成17年11月〜12月に第2回目の観測キャンペーンを実施した.特に多地点のラジオゾンデ観測を実施し,EAR周辺の対流活動の詳細を観測するためドップラー降雨レーダーをキャンペーンに合わせて運用した.観測キャンペーンでは,6時間毎にラジオゾンデ観測を行った.さらに短周期の重力波励起構造を調べるため,3日おきに19〜25時間の1時間毎観測を実施した.現在,取得データの解析を開始している. 上記の観測研究と平行して,第1回目のキャンペーンで取得されたデータ解析を進めた.その結果,スーパー雲クラスター(SCC)とそれに伴う風場の発達・消滅過程と地形との関係を調べた.インド洋から海洋大陸にSCCが到達すると雲システムは活発な対流活動を伴うものに変化し,地形の影響が明確に現れた.またキャンペーン中に観測されたMJOに伴う対流活動の不活発期と活発期において,TRMM観測から得られた雷活動度が変化し,不活発期の方が雷活動が活発であった.またみかけの顕熱加熱(Q1)や,みかけの潜熱加熱(Q2)の解析から,MJOの不活発期にはQ1がQ2よりも高く,背の高い対流活動が示唆された.これらの結果は,対流活動による重力波励起に,MJOなどによる季節内振動があることを示唆している.
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