Research Abstract |
本研究課題は,スマトラにおける赤道大気レーダ(EAR)を中心にして熱帯積雲対流活動を総合的に観測し,対流活動の階層性ならびに対流圏起源と大気波動の振舞いを明らかにすることを目的とする.そのため,風の鉛直プロファイルを観測するEARと同時に気温や水蒸気密度の鉛直プロファィルや降雨の3次元構造を観測する機器,更に様々な地上測器による観測を実施してきた. 取得されたデータ解析をすすめ,赤道スマトラ域を中心とした対流活動の特性ならびにそれに起因する大気擾乱や重力波に関して以下のことが明らかになった. 1.赤道域特有の季節内変動であるMadden-Julian振動(MJO)やスーパー雲クラスター(SCC)に対応して,3次元降雨構造は大きく変化する.大規模対流活動の抑圧期には却って,水平規模が小さく,背の高い対流が支配的になる. 2.大規模擾乱の内部にメソスケール雲クラスター(CC)が明確に現れる.SCCの東進はCCの連続的な発達の結果としで生じており,西スマトラの山岳地形とも関係する. 3.対流活動の微物理過程の帰結として生じる雨滴粒径分布は,顕著な季節内変動,日周変化を示す. 4.上に述べた対流活動の時空間変動に伴い,雷活動度や熱源の鉛直分布が明確に変化する.これは,陸上と海上で異なる特性を示す. 5.対流活動の結果,上部対流圏や下部成層圏における大気擾乱が顕著に生じることが明らかになった.これは,対流活動の日周変化や季節内変動を明確に反映しており,上下結合の時間変動を起こしているものと考えられる. 6.レーダ観測から得られた降雨構造をもとに重力波励起の数値実験を行った.ラジオゾンデ観測結果との比較により実験の妥当性を確認した. 7.GPS掩蔽観測から求めた下部成層圏の重力波エネルギーのグローバル分布をTRMMから得られた降雨量および降雨頂高度データと比較し,重力波エネルギーと対流活動の関連性を確認した.
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