2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13202028
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
加畑 博幸 京都大学, 工学研究科, 助手 (70293884)
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Keywords | 出芽酵母 / ヌクレオソーム / ヒストン / ファイバーFISH / 電気浸透流 / 1分子可視化 / ゲノム / 染色体工学 |
Research Abstract |
ひとつの細胞から染色体を引き出し、DNAを断片化することなく(細胞内全ゲノム情報を保持したまま)一本丸ごと紐解くことができる染色体マニピュレーションの基盤技術を開発した。この技術により、1.従来の風乾メニスカスに頼った偶発的な染色体ファイバー化の欠点を克服できる、迅速で再現性が良く伸長のベクトルを制御できる染色体ファイバー化装置を実現する、2.DNAファイバー上での転写装置と修復装置の再配置運動、およびヌクレオソーム形成の1分子実時間観察を行ない、ゲノムの構造・動態・生理機能相関を解明する、ことを目指した。項目1に関して、出芽酵母FY23株由来の細胞を直流電界チャンバーの基板部に配列し、基板表面に電気浸透流(EOF)を発生させて染色体を細胞外へ流し出し、DNAを流れの向きと平行に展延させた。このようにして得られた染色体ファイバーの中には400μm以上の長さに及ぶものがあり、これは第4染色体全長に相当した。酵母のrDNA様配列に相補的なプローブを用いて細胞内FISHを行なってからEOFによるファイバー化を試みたところ、染色体が細胞から流出しないまたはファイバー上に期待された数のFISHシグナルが観察されない困難に遭遇した。この原因はFISH時のDNAの熱変性に起因していた。項目2に関して、染色体ファイバーは、EOFの強弱の制御にしたがい末端部での伸長と巻き戻りを繰り返しながら伸縮運動した。このことは染色体にはゴム弾性が内在していることを示している。つぎに、EOFで展延保持された染色体ファイバーにヒストンタンパク質を添加したところ、ファイバー上にトロイド構造が現れた。ファイバーはトロイドで部分的に基板に吸着し始めたが、それ以外の部分では複数のトロイドがEOFの伸長力の負荷に逆らいながら集合し、ひとつの巨大なDNA凝集体を形成した。これは、裸のDNAから染色体への高次構造遷移の実時間機序を可視化したものである。
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