2002 Fiscal Year Annual Research Report
ポリグルタミンの凝集体形成、細胞障害におけるストレス蛋白質の役割
Project/Area Number |
13210155
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
木村 洋子 (財)東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所, 研究員 (80291152)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣塚 彰 京都大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (80204329)
|
Keywords | ポリグルタミン / アミロイド / 分子シャペロン / 凝集体 / AAA+ スーパーファミリー蛋白質 / 神経変性疾患 / コンフォーメーション / 構造変換 |
Research Abstract |
垣塚らは、ポリグルタミン結合蛋白質として、AAA+ superfamilyに属する分子VCPを同定した。さらに複眼にポリグルタミンを発現させたショウジョウバエの遺伝学的スクリーニングによって、VCPがポリグルタミンによる神経変性変異に促進的に働いていることを示した。また、木村らは、出芽酵母において、AAA+ superfamilyに属する分子シャペロンHsp104が、ポリグルタミンが水溶性の状態から不溶性の状態に変換するときに、促進的に働く事を示した。したがってAAA+ superfamilyに属する分子が、普遍的にポリグルタミンに働いている可能性が示された。 酵母内で形成されたポリグルタミンの凝集体は、アミロイドに結合するThioflavin-Sで染色されることから、凝集体はアミロイドであり、Hsp104はアミロイドの形成に促進的に働く事を示した。さらに、ポリグルタミンの凝集体形成はHsp104に依存するが、その依存度はポリグルタミンの長さや発現量によって異なることを示した。すなわち、ポリグルタミンの長さが短いと、その凝集体形成はHsp104に大きく依存するが、逆にポリグルタミンの長さが長くなる程、Hsp104がなくても凝集体形成をいくらかは起こすようになった。この事実を利用して、hsp104欠損変異株に長いポリグルタミンと短いポリグルタミンを共発現させると、本来hsp104欠損変異株では起きない短いポリグルタミンの凝集体形成が、促進される事を明らかにした。そして、その促進効果は、長いポリグルタミンの凝集体によるseedingの効果である事を示した。従って、Hsp104の役割がseedingによって部分的に置き換わられる事から、ポリグルタミンのアミロイド形成におけるHsp104の作用点が、アミロイドの"核"形成ではないかと考えられた。 発症の原因となる長いポリグルタミンは、コンフォーメーションの変化における分子シャペロンへの依存度が低いので、単独でもコンフォーメーションの変化を起こし得ると考えられる。そして、この長いポリグルタミンがいったんアミロイド凝集体を形成してしまうと、これが種となり、本来分子シャペロンの助けなしでは起きない短いポリグルタミンの凝集体形成も、促進されてしまうと考えられる。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Kimura Y, Koitabashi S, Kakizuka A, Fujita T: "Circumvention of chaperone requirement for aggregate formation of a short polyglutamine tract by the co-expression of a long polyglutamine tract"J.Biol.Chem.. 277. 37536-37541 (2002)
-
[Publications] Matsumoto S, Tanaka E, Nemoto T, Ono T, Takagi T, Imai J, Kimura.Y, Yahara, I., Kobayakawa T, Ayuse T, Oi K, Mizuno A: "Interaction between the N-terminal and middle regions is essential for the in vivo function of HSP90 molecular chaperone"J.Biol.Chem.. 277. 34959-34966 (2002)
-
[Publications] 木村 洋子: "ポリグルタミン病と分子シャペロン"神経研究の進歩. 46. 697-703 (2002)