2001 Fiscal Year Annual Research Report
HTLV-I感染T細胞株の増殖性進展と造腫瘍性関連遺伝子の検索と同定
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13216052
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 道之 京都大学, 再生医科学研究所, 助教授 (20027329)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 章 京都大学, 遺伝子実験施設, 教授 (00162694)
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Keywords | 成人T細胞白血病 / ATL / HTLV-1 / 造腫瘍性 / 増殖進展 / cDNAマイクロアレイ |
Research Abstract |
HTLV-1感染T細胞が悪性化増殖能を獲得し成人T細胞白血病(ATL)が発症する過程では、感染細胞の遺伝子に数段階の変化が必要であることが示唆されている。我々はATL患者の末梢血からIL-2に依存して増殖するHTLV-1感染T細胞株を多数樹立した。それらの一部では、長期培養中に、IL-2非依存性増殖(不死化)するようになり、さらにその一部はヌードマウス、SCIDマウスに造腫瘍性を示すことを見いだした。この観察に基づき、HTLV-1感染T細胞株が、IL-2依存性→IL-2非依存性→造腫瘍性獲得(悪性化増殖)へと増殖進展する過程が、生体内でのATL細胞の成立を反映しており、これらの細胞増殖性の変化と共に発現が著しく増減する複数の分子・遺伝子が白血病成立に関与しているとの可能性を考えた。本研究では、我々が樹立したATL患者に由来するIL-2依存性、IL-2非依存性T細胞株について細胞増殖性の進展、特に造腫瘍性獲得過程を詳細に検討し、上記の過程が多くの細胞株で存在することを確認した。これらの中で、IL-2依存性からIL-2非依存性への移行に伴い強い造腫瘍性を獲得した3株についてIL-2依存性からIL-2非依存性への移行前後で著しく増減する遺伝子の発現をHTLV-1感染T細胞株からmRNAについてcDNAマイクロアレイ法により、Incyte社の9,000遺伝子cDNAについて解析した。現在までのところ、解析した3株に共通して著しく変化する遺伝子は同定していないが、ヒト遺伝子は3-4万あると推定され解析したのはそれらの1/3-1/4に過ぎず、目的とする遺伝子が存在しないことを意味するのではないと考えられる。しかし、一つの細胞の組み合わせでは、leukocyte immunoglobulin-like receptor、selenoproteinP、coproporphyrinogen oxidaseなどが6倍以上発現が増強していた。逆に発現の著明な減少が認められたのは、regulator of G-protein signaling 1、T cell receptor b locus、SPARK-like 1、Lysosomal antigen、CD53 antigenなどであった。この様に幾つかの興味ある遺伝子を同定しており、その一部については機能解析を始めている。 本研究に関連した成果は2編の論文が投稿中であり2編の論文が準備中である。
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