2002 Fiscal Year Annual Research Report
IGF-I受容体による放射線抵抗性シグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
13218045
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
三浦 雅彦 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (10272600)
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Keywords | IGF-I受容体 / 放射線抵抗性 / シグナル伝達 / 生存シグナル / 分子標的 |
Research Abstract |
IGF-IRの発現が放射線抵抗性を誘導するという報告が、我々を含めいくつかなされていたが、その原因となる下流シグナル伝達経路に関する包括的な研究はこれまで行われていなかった。本研究では、IGF-IR遺伝子欠損マウス由来細胞に、種々のシグナル伝達に影響を与えうる変異を導入したヒトIGF-IRを発現させ、その放射線感受性を調べることで下流シグナル伝達経路の同定を試みた。mutational analysisの結果、Y950と1245番目以後のC末端領域の2ヶ所が独立に抵抗性シグナルを伝達し、放射線抵抗性を喪失するには、一重の変異が必要であった。Y950からはPI3-KとMEK/ERK経路が、C末端からはMEK/ERKと14-3-3/c-Raf経路が活性化されるので、それぞれがどの程度抵抗性に寄与しているか、この解析のみでは明らかにすることができなかった。そこで、Y950およびΔ1245変異体にPI3-KまたはMEK阻害剤を処理して解析した結果、MEK/ERK経路の活性化のみで抵抗性が誘導されること、PI3-Kまたは14-3-3/c-Raf経路単独の活性化では誘導されないこと、しかし、2つの経路が同時に活性化される状況では誘導されることを明らかにした。すなわち、IGF-IRによる放射線抵抗性には、特定の単一シグナル伝達経路が関与しているのではなく、それぞれのシグナル伝達経路が異なる重みをもって冗長的に関与していることが明らかにされた。IGF-IRが冗長的に放射線抵抗性シグナルを発しているという本研究の結果は、IGF-IRを過剰発現しているような腫瘍では、IGF-IRキナーゼそのものを分子標的とすることが、有効な放射線増感につながる可能性を示唆している。IGF-IRは、放射線抵抗性のみならず、腫瘍増殖能やHIF-1αの誘導を介した血管新生の亢進等、腫瘍の増殖にとって有利な環境を提供している。従って、in vivoにおけるIGF-IRを標的とした放射線療法は、今回のin vitroにおける効果以上のものが期待できると思われる。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Yu, D., Watanabe, H., Shibuya, H., Miura, M.: "Redundancy of radioresistant signaling pathways originating from insulin-like growth factor I receptor"J. Biol. Chem.. (印刷中).
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[Publications] Imoto, I et al.: "Expression of cIAP1, a target for 11q22 amplification, correlates with resistance of cervical cancers to radiotherapy"Cancer Res.. 62. 4860-4866 (2002)
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[Publications] Watanabe, H. et al.: "Insulin-like growth factor I receptor is expressed at normal level in Nijmegen breakage syndrome cells"Biochem. Biophys. Res. Commun.. 296. 62-66 (2002)
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[Publications] Yu, D.et al.: "The phosphatidylinositol-3 kinase pathway is not essential for insulin-like growth factor I receptor-mediated clonogenic radioresistance"J. Radiat. Res.. 43. 325-329 (2002)