2004 Fiscal Year Annual Research Report
パルミラの葬制とその社会的背景にかかわる総合的研究
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13301022
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Research Institution | Archaeological Institute of Kashihara, Nara |
Principal Investigator |
西藤 清秀 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第二課, 課長 (80250372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 隆康 奈良県立橿原考古学研究所, 所長 (30025035)
豊岡 卓之 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第一課, 主任研究員 (00250374)
吉村 和昭 奈良県立橿原考古学研究所, 調査第二課, 主任研究員 (10250375)
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Keywords | 地下墓 / 棺棚 / 土坑墓 / 遺体 / 火葬骨 / 羊 / 中手骨 |
Research Abstract |
今年度は、昨年掘り残したH号墓という地下墓の棺棚や土坑墓の調査を実施し、発掘調査を完了させることであった。昨年の調査において埋葬施設として使用されていた33箇所の棺から男性22体、女性16体、若年6体、子供22体の計66体の遺体を検出した。今年度は、39箇所の棺と11基の土坑墓を合わせて50箇所の埋葬施設を調査し、男性12体、女性17体、若年3体、子供17体、乳児14体、性別不明大人1体、火葬遺体2体の66体の遺体を検出した。それゆえH号墓には83箇所の埋葬施設に少なくとも男性34体、女性33体、若年9体、子供39体、乳児14体、性別不明大人1体、火葬遺体2体の132体の埋葬がおこなわれていた。この数は、C号墓やF号墓に埋葬された遺体の約倍の数字にあたる。しかしこの数字は、一つの家族での埋葬者数を表わしているのではなく、門に刻まれた譲渡碑文のように譲渡されたいくつかの家族の総体である。しかし、何家族がH号墓を使用しているのかは、現時点では不明である。今後、その解明のため考古学的な棺棚の構築法や遺体の埋葬法、人類学的な人骨の分析等の詳細な調査が必要となる。 今回の調査で火葬骨と思われる人骨を検出したが、これは遺体をそのまま荼毘に伏したのではなく、骨になった状態の遺体を焼いたことが、骨の状態から観察することができた。現在までのパルミラの調査ではこのような骨は発見されていない。パルミラ遺体埋葬のあり方に新たな知見を加えることになった。 さらに、SL1-1とNL5-0からは羊の前足の中手骨が出土しており、この骨も女性にかかわる遺物と考えられる。これらの骨が、若き女性の遺体に伴われていたことは、パルミラ女性の生活の中でこの羊の骨が重要な位置を占めることを示すものと思われる。 このようにH号墓の調査で得られた資料は、今後のパルミラの葬制を考える上でも重要な位置づけとなった
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Research Products
(5 results)