2003 Fiscal Year Annual Research Report
シンクロトロン放射光電子分光による溶液内分子の構造研究
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13304033
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Research Institution | Tokyo University Agriculture And Technology |
Principal Investigator |
鵜飼 正敏 東京農工大学, 工学部, 助教授 (80192508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横谷 明徳 日本原子力研究所, 関西研究所, 副主任研究員 (10354987)
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Keywords | シンクロトロン放射光 / 光電子分光 / 液体分子線 / 超励起分子のダイナミクス / 溶液構造の緩和過程 / 水素結合ネットワーク / 放射線損傷の修復 |
Research Abstract |
本研究では、単色化シンクロトロン放射光および超励起状態のダイナミクスという方法論と知見にもとづきこれを発展させることにより、気相原子物理学と湿潤生態系という相異なる二つの視点を総合し、溶液環境にある分子の放射線損傷・修復に現れる内殻超励起状態のエネルギー的・溶媒和的構造を明らかにするための新しい分光学的手法を開拓し、これを生体分子あるいは種々の溶質分子を含む水溶液系に適用して研究することを目的とする。特に水溶液中の分子の運動性や水和結合のネットワークにより生じた特定構造が照射効果に与える影響という観点から、真空中に発生させた液体分子線に・西播磨SPring-8放射光施設の高輝度軟X線シンクロトロン放射光を用いた光電子分光という先端分光分析を適用し、放射線照射後の溶液構造の緩和過程を研究するものである。 本年度は、昨年度に開発・建設してSPring-8に運搬した液体分子線光電子分光装置に対して、シンクロトロン放射光を用いた実地の性能評価と調整を行なうとともに、電子ビーム照射によるオフライン性能評価・調整を通じた最適化実験によって、本実験装置をシンクロトロン放射光を用いた光分解能電子分光実験技術として確立した。また、真空中にて安定した液体分子線を発生させるために、様々な付随技術を開発するなどの具体的検討を継続し、軟X線シンクロトロン放射光をもちいた液体分子線光電子分光装置を完成した。 以上の装置を用いて、全放出光電子の測定による液体の水試料に対する酸素原子K殻吸収端領域におけるX線吸収スペクトルを世界ではじめて測定した。これは純水中のクラスターの内殻超励起状態のエネルギーと電子的構造の観測を意味し、その成果は、本年5月にカナダ、バンフにて開催されるDNA損傷に対する国際ワークショップにて講演される。 以上、本年度の計画をほぼ遅滞なく遂行できた。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] M.Ukai: "A novel technique of liquid water jet combined with synchrotorn radiation for photoelectron study of DNA and its damages"Abstract, 3^<rd> International Workshop on Radiation Damage to DNA May 25-30, 2004, Banff, Canada. (in press). (2004)
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[Publications] A.Yokoya: ""In situ" observation of guanine radicals induced by ultrasoft X-ray irradiation in the K-edge region of nitrogen and oxygen"Intnat.J.Radiat.Biol.. 80(in press). (2004)
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[Publications] K.Akamatsu: "Qualitative and quantitative analysis of the decomposition products that arise from the exposure of thymine to monochromatic ultrasoft X-rays and ^<60>Co gamma rays"Radiat.Res.. 161(in press). (2004)
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[Publications] M.Tanaka: "First observation of natural circular dichroism for biomolecules in soft X-ray region studied with a polarizing undulator"Physica Scripta. 未定(accepted). (2004)
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[Publications] K.Fujii: "Ion desorption from DNA components by 0.5 keV ultrasoft X-ray photons"Radiat.Res.. 161(in press). (2004)
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[Publications] 横谷明徳: "DNAのSR軟X線光化学過程-突然変異の根源を探る-"平成16年度電気学会全国大会講演予稿集. 3S15-1-3S15-4 (2004)
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[Publications] 鵜飼正敏: "シンクロトロン放射光電子分光法による液体分子線分光研究"第17回日本放射光学会年回・放射光科学合同シンポジウム講演要旨集. 166 (2004)
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[Publications] 横谷明徳: "軟X線共鳴励起によるDNA塩基ラジカル生成過程:EPRを用いた"その場"観察"第17回日本放射光学会年回・放射光科学合同シンポジウム講演要旨集. 131 (2004)
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[Publications] 高畠博嗣: "放射光電子分光法による液体分子の研究(提案と現状)"原子衝突研究協会第28回研究会講演概要集. 103-104 (2003)
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[Publications] M.Ukai: "Charged Particle and Photon Interaction with Matter : Chemical, Physicochemical, and Biological Consequences with Applications, Eds.A.Mozumder and Y.Hatano"Marcel Dekker (New York). 37 (2003)
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[Publications] 横谷明徳: "SR・FELで拓くナノとバイオの新領域(分担)"電気学会(印刷中). 4 (2004)