Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 芳文 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (20014144)
河野 正司 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50014098)
森本 俊文 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20028731)
古谷野 潔 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (50195872)
野首 孝祠 大阪大学, 大学院・歯学研究科, 教授 (80028753)
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Research Abstract |
床義歯の形態,維持装置の配置等の設計様式か感覚に及ぼす影響を分析し,機能との関係を検討する目的で,触覚,痛覚,味覚等の生理学的データを収集し,さらにその神経筋機構について動物実験より分析を進めた.まず触覚について口蓋粘膜の二点識別閾を健常者および上顎片側遊離端欠損で測定した結果,口蓋前方の2〜3mmに対し第一大臼歯付近では10mm以上となり,さらに前額・矢状方向を比較すると全般的に前額方向の閾値が低かったが,犬歯,口蓋中央付近では逆転も見られ,過去の報告と異なる結果となった.一方,義歯装着者の床下粘膜部では前額方向の閾値が高くなる傾向が見られた.次に無歯顎症例の圧痛閾値を分析したところ,口腔粘膜は部位により異なる疼痛感受性を持ち,総義歯装着者は有歯顎者より圧痛閾値が低く,咬合力が大きい程,圧痛閾値が低くなる傾向を示した.また総義歯装着者を対象に,レジン床と金属床の違いが味覚に及ぼす影響についてVAS値を分析した結果,金属床の方が酸味,苦味の味覚閾値ならびに違和感が有意に小さく,義歯床の材質の違いや装用感が味覚に影響を与えることが示唆された 次に健常歯列者に口蓋床を装着し,床の厚みを変えた際の嚥下までの咀嚼回数を調べた結果,薄い床では咀嘱回数が減少し,厚い床では逆に咀嚼回数が増加する傾向が認められ,床の厚みが唾液分泌量,食塊形成に影響を与えることが示唆された. 一方,動物実験では口腔領域近辺を支配する一次感覚ニューロンの電気生理学的特性を検討するためにラットを用い,ホールセルパッチクランプ法を適用して神経成長円錐にブラヂキニンやATPをパフで作用させると細胞体から2相性の電流が記録され,三叉神経節ニューロンを分離培養する方法を確立した。さらに生理的咬合高径決定を分析するため,モルモット前歯部に咬合挙上板を10日間装着して臼歯を挺出させると,その後歯ぎしり様の運動を繰り返し元の高径に戻る傾向を示した. 以上より,口腔環境の変化に対して口腔感覚が鋭敏に反応し,適応するメカニズムの一端が解明され,感覚と機能との間に密接な関連のあることが示唆された.
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