Research Abstract |
1.各種口腔癌培養株に対する各種薬剤の障害効果とその機構の検索 腫瘍選択性を示す物質を探索するために,多種のサンプルのヒト口腔癌細胞(口腔扁平上皮癌HSC-2,HSC-3,唾液腺腫瘍細胞HSG)や,ヒト正常細胞(歯肉細胞,歯根膜細胞,歯髄細胞)に対する細胞傷害活性をMTT法を用いて比較検討した。その結果3,5-dibenzoyl-1,4-dihy dropyridines,アセロラ,もぐさの抽出液(部分精製標品),サポニン,テルペン類,キウイ抽出液,ヒマラヤの薬草(有効係数:1000),ビワ葉成分,コデイノンが腫瘍選択的な細胞傷害活性を示した。また3,5-dibenzoyl-1,4-dihy dropyridineやアセロラ抽出物は,対照で用いたベラパミル以上の薬剤耐性MDR(Multiple Drug Resistance)克服活性を示した。 2.口腔癌原発巣におけるp53遺伝子変異の検索 口腔癌患者21例からの生検材料を用いて,p53遺伝子変異の検索を行った. まずp53抗体を用いて免疫組織化学的検索を行った結果,21例中9例(42.9%)に陽性所見を認めた.次にp53 exon 5〜8における遺伝子変異の有無をPCR-SSCPでスクリーニング後,direct sequencingにて検索したところ,5例(23.8%)に点突然変異を見出した.このことから,p53免疫組織化学的検索と遺伝子変異の検索のデータにおいて相関関係は見出されなかった. 3.口腔癌患者個々の癌組織の抗癌剤感受性検査 Case1.:5-FU:78.2%,CDDP:69.2%,PEP:0%,TXL:60%,254-S:83.5% Case2.:5-FU:53.2%,CDDP:46.3%,PEP:41.1%,TXL:73.3%,254-S:68.8% Case3.:CDDP:48.8%,PEP:33.2%,TXL:90.3%,254-S:67.9% Case4.:informed concentが得られなかった.Case5:腫瘍の増殖が悪く,assayできなかった. 4.口腔癌患者個々の癌組織からの培養株の樹立とリンパ球活性化療法の基礎的検索 口腔癌組織からの培養株の樹立を検討中であるが,現在までのところ症例数が少なく,成功していない.そのためまず,健常人から末梢血単核球を採取し,単球よりIL-4とG-CSFを用い樹状細胞(DC)を調整した.既存の癌細胞株(HSC-2,-3,-4,KB,Ca9-22)におけるVEGFの発現を検索したところ,いずれの培養株においてもVEGFの発現,分泌が認められ,特にCa9-22に最も強くみられた.そしてCa9-22の培養上清を用い,単球のDCへの分化誘導に対する影響をin vitroで検索したところ,著しく抑制的に作用することを確認した.このことからVEGFの作用を抑制することがリンパ球活性化療法成功の鍵であると思われた.
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