2003 Fiscal Year Annual Research Report
大気中超微量気体の変動・動態・放出機構解明と大気循環解析
Project/Area Number |
13308028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
巻出 義紘 東京大学, アイソトープ総合センター, 教授 (40011746)
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Keywords | ハロカーボン類 / CF4 / 地球温暖化気体 / 超微量気体成分 / 濃度測定 / ガスクロマトグラフ / 質量分析装置 / バックグラウンド大気 / 都市大気 |
Research Abstract |
研究代表者は、大気中の主要ハロカーボン類の南北両半球における地球規模での大気中濃度の経年変動や成層圏までの高度分布から、それらの放出過程や大気中での挙動等を明らかにしてきたが、本研究では、大気中濃度がきわめて低い、検出器感度が低い、大気からの分離濃縮が困難などの理由で未だ世界的にもその高精度定量に成功していない地球温暖化係数の大きい長寿命化合物や新化合物である超微量成分分離・検出・定量法開発のために、高感度になりうる検出器を導入し、新測定方法を開発し、それらの大気中の分布と変動、挙動、地球環境への影響を明らかにすることを目的とした。 新たに購入した高感度ガスクロマトグラフ/質量分析装置を大気試料分析用に改造し、装置の安定化、高感度化の改善を行い、大気試料測定条件の最適化を行った。しかし超微量成分、とくにCF4は沸点が低く、空気成分から分離・回収がきわめて困難であり、充填剤の選択と精密制御が不可欠で、試料導入濃縮装置を開発した。平成15年度は、測定精度・確度の向上と大気試料の分析と解析を行ったが、その間に、大気中に普遍的に存在する不活性気体、クリプトン(Kr)が目的のCF4と濃縮・分析過程における挙動が非常に似ていることを見出し、世界で初めて、CF4/Krで規格化すると、分析精度が飛躍的に向上し、必要な試料量は数分の一に削減できた。 その結果、これまで本研究室で採取・保存してきた過去20年以上にわたる南北両半球(北海道と南極昭和基地)のバックグラウンド大気試料、および大気球搭載液体ヘリウムクライオジェニックサンプラーで採取した成層圏までの高層大気試料の分析が可能になった。分析の結果、南北両半球ならびに全球規模でのCF4等の大気中濃度の高精度・高確度の分布と変動が、詳しく明らかになった。また大気球による高度分布の結果から、成層圏大気の古さ、地球大気の大循環についての新たな知見が得られた。 一方、人間活動による主要な放出域で、世界的にも特有な大都市である「東京」都心部における大気中濃度の連続測定結果の解析から、多数の人工物質の放出量を明らかにする方法を開発した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Miyoshi, Y.Makide: "Estimation of the Emission of Volatile Organic Compounds (VOCs) in Central Tokyo by the Dynamic Analysis of Their Temporally Increasing Atmospheric Concentrations in Calm Weather Afternoon Conditions."Chemistry Letters. 32. 562-563 (2003)
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[Publications] 三好猛雄, 巻出義紘: "東京都心部における揮発性有機化合物(VOCs)の大気中濃度変動の測定および発生源との相関に基づく挙動の解析"日本化学会誌. 2001. 233-237 (2001)
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[Publications] T.Miyoshi, Y.Makide: "Estimation of the Emission of Volatile Organic Compounds (VOCs) in Tokyo from Their Observed Increments of the Atmospheric Averaged Concentrations above the Background Concentrations."Chemistry Letters. 30. 1260-1261 (2001)
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[Publications] T.Nakazawa, Y.Makide et al.: "Variations of Stratospheric Trace Gases Measured Using a Balloon-borne Cryogenic Sampler."Adv.Space Res.. 30. 1349-1357 (2002)
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[Publications] S.Shirai, Y.Makide et al.: "The Stratospheric Distributions of Long-lived Atmospheric Halocarbons over Kiruna and Sanriku Observed by Balloon-borne Cryogenic Sampling and Subsequent GC Analyses."宇宙科学研究所報告. 45. 75-82 (2003)