Research Abstract |
べん毛モーターの回転力は,特定イオンの電気化学ポテンシャル差を,モーターの固定子と回転子の相互作用を通じて回転エネルギーに変換することにより発生すると考えられている.その固定子タンパク質として,ビブリオ菌のナトリウムイオン駆動型べん毛モーターにおいては,PomA/PomB複合体が同定されている.また,PomAとPomB以外にも外膜タンパク質MotXとMotYがべん毛の回転に必要であることが分かっている.本年は,エネルギー変換に必須な固定子タンパク質のべん毛モーターへの組み込み過程を調べた.PomAとPomBのN末端にgreen fluorescent protein(GFP)を融合したタンパク質(GFP-PomA,GFP-PomB)の発現プラスミドを作製した.GFP-PomBはΔpomβ株の遊泳能を弱いながらも相補したが,GFP-PomAはΔpomA株の遊泳能を相補しなかった.GFP-PomAをΔpomA株で,GFP-PomBをΔpomB株でそれぞれ発現させたところ,細胞の極に顆粒状の蛍光が観察された.また,この顆粒状の蛍光は,べん毛と共局在することが確認された.しかし両GFP融合タンパク質をΔpomAB株でそれぞれ単独で発現させると,細胞極の顆粒状の局在は観察されなかった.共発現系を作製し,ΔpomAB株で発現させたところ,極局在が観察された.極べん毛欠損株では,極局在は観察されなかった。これらのことから,固定子タンパク質は膜上で複合体を形成し,複合体でべん毛モーターに組み込まれると考えられた.そして,この組み込み課程が明らかになることで,モーター構造の動的解析やエネルギー変換蛋白質の機能解析に大きく寄与すると考えられる.一方,モーター蛋白質MotYがMotXの非存在下において,ペリプラズム空間に可溶性タンパク質として存在すること見いだし,MotYの大量発現・精製に成功し,結晶化条件を検討した.六方柱の結晶を得ることに成功し。2.7Å分解能の回折像を得ることができた。現在,位相決定を行い,分子モデル構築へと研究を進行する予定である.
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