2004 Fiscal Year Annual Research Report
超高真空封止型赤外顕微鏡の開発と固体物理への利用研究
Project/Area Number |
13354003
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
難波 孝夫 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (30091721)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡村 英一 神戸大学, 大学院・自然科学研究科, 助教授 (00273756)
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Keywords | 赤外顕微鏡 / 超高真空顕微鏡 / 赤外反射分光 |
Research Abstract |
本研究の目的は他に例を見ない「超高真空封止型赤外顕微鏡」を開発することである。この顕微鏡は可視から赤外領域までの広い波長領域をカバーする。「超高真空封止型」とは観測試料と共に顕微鏡の機能全てを超高真空中チャンバー内に格納し、外部からこれを操作するという全く新しい機能を備えた顕微鏡をさし、従来の既製品が持っていた致命的な欠陥を全て克服できる、ものである。本研究により開発された超高真空封型赤外顕微鏡を用いて物理的に興味ある物性を示す強相関電子系物質の光学スペクトルの解析によりこの物質の電子構造解明に関する研究を行う。本年度は顕微鏡の完成を受けて、温度により金属絶縁体転移(以下「MI転移」と称す)を示すバナジュウム化合物V_2O_3とV_6O_<13>を取り上げ、その顕微鏡学的な分光実験を行った。その主旨はこの両物質のMI転移が大きな体積歪を持つ一次の相転移であり、転移前後で降温と昇温を繰り返すと結晶が細かく砕けるためにこれまでは測定が繰り返し行えなかった物質だからである。顕微鏡分光法では細かく砕けても0.1mm程度の破片が残っていれば測定が可能な筈である。 V_2O_3は転移温度153Kで、高温では金属状態、低温では絶縁体の性質を示す。先ず、室温での繰り返し測定により反射率が5%の精度で決定できることを示した。その後、液体窒素を用いて温度を下げ、転移温度の前後で降温と昇温を繰り返すながら測定した。試料は砕けたが、目論見通り0.1nm程度の欠片についての測定が可能であった。その際、試料格納のクライヲスタットに光学窓が不要なことから狙った試料の部位の測定が格段に容易であることも示せた。類似化合物のV_6O_<13>についての測定も行い、初めてそのMI転移前後の赤外スペクトルを観測し、フェルミ準位近傍に新しい電子状態が形成されることなど、その電子状態についての知見を得た。 以上の成果は2003年における日本物理学会、日本放射光学会において発表した。
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