Research Abstract |
本研究では,まだ未解明の問題の多い数年〜数十年の気候変動の解明のために,ミリメートル〜ミクロンオーダーの連続的元素分析を実現するために,日本電子(株)の技術者とともに「蛍光X線地殻コアロガー(開発コードネームTATSCAN-F1)」を開発した.このTATSCAN-F1は,エネルギー分散型蛍光X線分析システムをベースにした,最長250mm,最大幅200mm最大厚み100mmの海底および陸上のコア状および板状試料を非破壊状態で連続的に測定し,含有元素の定性および定量分析するシステムである.この装置は,試料表面を最小0.1mm間隔で,多元素,多鉱物の強度情報を自動的に連続的に収集する.試料ステージは,空間分解能0.1mmの自動ステップ(ステップ条件は可変)であり,ライン分析および2次元面分析ができる.測定面までの高さを自動的に検知し,X線照射計高さを調整する自動フォーカス機能,スリット型のコリメータ(0.1, 0.4, 1.9mm)を有する.また,CCDカメラを搭載し,測定点を確認品柄分析でき,測定点の画像を保存する機能も有する.連続的かつ定量的な計測値は,統計解析やスペクトル解析することによって,変動の周期性や振幅変調など,より厳密な議論を可能とする.本研究では,TATSCAN-F1によって,始世代・縞状鉄鉱層,白亜紀中期黒色頁岩層,(3)第四紀完新世・網走湖・湖底堆積物コアを解析した.縞状鉄鉱層では,線分析から石英からなるSiの層と,鉄鉱物からなるFeの層の互層が明瞭に含有量変化として検出,面分析結果からはSiの層では同時にPが,Feの層では同時にNa, Mg, Ca, Mn, Rb, Srが多いことが検出された.白亜紀中期黒色頁岩層では,0.1〜1mmの厚さで繰り返すCaとAlの空間変動の変動が検出された.網走湖堆積物では,数mm〜1cm程度のSiの極大と,その間にAlの変動が検出された.網走湖の堆積速度は平均6mm/年であるので,このTATSCAN-F1は,年内変動を実に見事に検出できた.
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