2001 Fiscal Year Annual Research Report
近代社会における美的なものとジェンダー―18世紀イギリスの場合
Project/Area Number |
13410016
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長野 順子 神戸大学, 文学部, 助教授 (20172546)
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Keywords | 近代美学 / 崇高 / ピクチャレスク / グランド・ツアー / ゴシック・ロマンス / フランス革命 / ジェンダー / 国民国家 |
Research Abstract |
18世紀から19世紀初めのイギリスにおいてグランド・ツアー、ピクチャレスク趣味、崇高美学、ゴシック小説等の流行が高まる中で著作活動を行った女性たちの、市民社会における役割とステイタスがどのようなものであったのか、具体例に当たりつつ検討する作業を進めた。その最初の成果の一部は、平成13年7月8日立命館大学での日本シェリング協会第10回大会にて「倒立した崇高とその怪物性」という題で、また8月31日神田外国語大学での第15回国際美学会にて'Subversive Sublime and Its Monstrosity : Rereading Mary Shelley's "Frankenstein"'という題で口頭発表を行った。同年11月15日〜12月16日にはドイツとイギリスを中心に海外出張を行い、女性旅行者たちのヨーロッパ旅行の足跡を実際に辿り、大英図書館にてLady Mary Wortley Montagu, Janet Schaw, Helen Maria williamsらの旅行記、The Female Spectator, The Ladies Mercury, The London Magazine等18世紀に続々出版された雑誌の原本に当たって詳しく調査した。ロンドン大学のElisabeth Shelleken講師、Timon Screech講師とは18世紀の旅行をめぐるナラティヴに関する情報の交換を行った。とりわけLady Montaguのトルコ旅行記におけるオリエンタリズム、J.Schawの西インド諸島旅行記におけるコロニアリズム、H.M.Williamsのフランス革命のルポタージュにおける政治と美学の関わり、また当時の知識人や一般読者の反応等に関して、多くの貴重な資料を収集した。さらにそれらの旅行記がAnn RadcliffeやMary Schelleyらのゴシック小説の風景描写、Jane Austenの小説の中の国家意識等々に与えた強い影響も考慮すべきことを、確認した。これらのテーマは、女性たちが市民社会において要請されたジェンダー的な役割をどう引き受け、いかなる齟齬を感じていったのかという、より一般的な問題とも密接に関連しており、きわめて大きな今後の研究の展望を得ることができた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Junko Nagano: "The 'Aesthetic' and the System of Exclusion … From the Discourse of Eighteenth-century Aesthetics to Mary Shelley's Frankenstein"AESTHETICS (The Japanese Society for Aesthetics). Number 10. 15-25 (2002)
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[Publications] Junko Nagano: "The Subversive Sublime and Its Monstrosity : Rereading Mary Shelley's Frankenstein"Act of the XVth International Congress of Aesthetics. (出版予定). (2002)
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[Publications] 今西祐一郎: "ファンタジーの世界 第一章 モンスター幻想-『フランケンシュタイン』を読む(長野担当分)"九州大学出版会(出版予定). (2002)