2002 Fiscal Year Annual Research Report
近代社会における美的なものとジェンダー-18世紀イギリスの場合
Project/Area Number |
13410016
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長野 順子 神戸大学, 文学部, 教授 (20172546)
|
Keywords | 近代美学 / 崇高 / ピクチャレスク / グランド・ツアー / ゴシック・ロマンス / フランス革命 / ジェンダー / 国民国家 |
Research Abstract |
平成13年度に引き続き、18世紀後半のイギリスにおけるピクチャレスク趣味・旅行記・ゴシック小説の流行の中で・読者/消費者としてだけでなく作者/生産者として両義的な仕方で「美学」の言語(「美的言説」)に関わっていった女性たちの著述活動について調査し、そこに見られる齟齢や自己矛盾を読み解いていく作業を進めた。「美的主体」(眺める主体)という立場に奇妙な違和感を覚えた彼女らに共通する美的言説の逸脱的な用い方は、逆に、当時の美学の根本原理であった「無関心性」に疑義を投げかけ、さらには近代美学を支えていた政治的・社会的論理を階級・人種・ジェンダーといった複合的な視点から浮き彫りにすることになる。具体的な作業としては、代表的な女性の旅行記及びゴシック小説の中の異国描写/風景描写に見られる崇高・ピクチャレスク・オリエンタリズム等の言説を詳しく分析した。その成果の一部としては、平成14年8月1日に神戸大学での第4回ジェンダー研究会にて「く風景>としてのフランス革命--革命の文化記号学、そのイギリス・ヴァージョン」という題で、また同年12月22日に広島大学での美学研究フォーラムの講演として「近代社会の美的言説・コロニアリズム・ジェンダー--スコットランド女性の見た西インド諸島」という題で口頭発表を行った。また同年7月には「<倒立>した崇高とその怪物性--『フランケンシュタイン』におけるゴシック・ファンタジー」という論文が『シェリング年報』第10号(日本シェリング協会編)に掲載された(PP.80-91)。また、平成14年8月12日〜9月2日にイギリス・大英図書館にて18世紀の風景美学及び旅行記に関する一次資料の調査を行い、平成15年1月9日〜15日にはアメリカオレゴン大学にて英文学/女性学を担当するE・ボールズ教授と18世紀イギリスの女性の旅行記をめぐって研究交換を行った。これらの成果は、報告書にまとめる予定である。
|
Research Products
(2 results)
-
[Publications] 長野順子: "<倒立>した崇高とその怪物性--『フランケンシュタイン』におけるゴシック・ファンタジー"『シェリング年報』日本シェリング協会編. 第10号. 80-91 (2002)
-
[Publications] Junko Nagano: "The Subversive Sublime and Its Monstrosity : Rereading Mary Shelley's Frankenstein"Act of the XVth International Congress of Aesthetics. (CDrom)(発行予定). (2003)