2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13410020
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
鐸木 道剛 岡山大学, 文学部, 助教授 (30135925)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 百合 つくば国際大学, 産業社会学部, 講師 (50326815)
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Keywords | ロシア / イコン / 正教会 / ニコライ大主教 / 山下りん / アラスカ / ブルーニ / クリューコフ |
Research Abstract |
研究分担者(協力者)の田中智恵子、および加藤百合とともに、9月末にアラスカのシトカとジュノーのロシア・イコンの調査を行った。シトカは1800年以来、ロシアのアラスカ進出の拠点であり、1841年にはアラスカ伝道者として著名なインノケンティ・ヴェニアミノフがアラスカで最初の主教として着任した場所である。わが国のイコンと関連あるイコンは、シトカで3点発見した。シトカの聖ミハイル聖堂(1848年成聖)には、ラファエロの『変容』の上半分をイコンとして流用している例があり、これはわが国では愛知県の半田の正教会に見られるものである。またシトカの主教館付属礼拝堂(1843年成聖)では、石巻と盛岡にあるのと同じ石版画の『受胎告知』があった(25.0×20.8cm)。その銘文はロシア文であるが、同じ図柄で銘文のみ日本文に代えられたのが白河の正教会にある。また主教館のインノケンティの寝室の壁面には、わが国のイコン画家山下りんがしばしば描いた『復活』のイコンの原画となった版画が掛けられていた(55×39cm)。この原画を描いた画家は「V.クリューコフ」と推測されるのであるが、インノケンティがその腕前に驚嘆しているイコン画家にワシリー・クリューコフという画家がいたことがわかった。ワシリー・クリューコフはロシア人とアレウト人とのクレオールである。アレウト諸島のウナラスカ島にはワシリー・クリューコフが描いたイコンが現存するという。10月には、同じく田中智恵子、および加藤百合とともに、サンクト・ペテルブルグ、モスクワ、パレフを訪問し調査を行った。パレフでは聖十字架挙栄聖堂に、ドイツのユリウス・シュノル(Julius Schnorr von Carolsfeld)が描いた聖書挿絵中の『昇天』がイコンに流用されている例を発見した。シュノルの聖書挿絵のイコンへの転用は、わが国のイコンにも例が多いところである。また肖像画、歴史画も描いたイコン画家パーヴェル・コリンの父のディミトリー・コリンが1874年にラファエロの宗教画を模写していることを発見した。
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