2002 Fiscal Year Annual Research Report
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13410122
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
金子 裕之 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 部長 (10000499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 健吉 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 文化遺産研究部, 主任研究官 (40194584)
高瀬 要一 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 文化遺産研究部, 遺跡研究室長 (00090374)
渡辺 晃宏 独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所, 平城宮跡発掘調査部, 史料調査室長 (30212319)
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Keywords | 都城と園林 / 苑と池 / 出水酒船石遺跡 / 貴族の嶋 / 雁鴨池 / 蓮池 / 一茎二花蓮 / 瑞祥 |
Research Abstract |
古代都城の苑地(現在は園林の語を用いる)は園池だけではなく宮殿、楼閣、馬場や果樹・農園などからなる複合施設であり、都城に必須の施設である。苑地の伝統は中国にあり、そこでは巨大な規模を誇った。こうした苑地は7世紀後半の天武朝には、朝鮮半島を経て日本に伝来した。『日本書紀』にみえる白錦御苑はその施設の嚆矢であろう。ここ数年の発掘調査によって、飛鳥京跡では白錦御苑にあたる出水酒船石遺跡において、新羅の故地である韓国慶州の雁鴨池などと共通点が多い園池遺構が明らかになった。 これに対し、平城宮の東院庭園(楊梅宮南池)や西池などの構造は飛鳥京跡跡での遺構とは大きく異なる。8世紀を境に園池の意匠・構造が変化する理由は、『大宝律令』の制定、唐との直接交流が再開したことにより、文化移入の対象国が朝鮮半島から中国(唐)へシフトしたことと密接に絡むのであろう。以上は昨年度までの実績である。 本年は昨年度の日中古代苑地史料をもとに「中国庭園史料関連データベース」を作成し、詳細な検討を加えた。その結果、古代都城の苑地には朝鮮半島を媒介として、中国南朝の影が予想以上に濃厚なことが判明した。それは苑地の名称など固有名詞に留まらず、瑞祥の「一茎二花蓮」といったことにも及ぶようである。瑞祥は皇帝の徳を示す事柄であり、こうした事柄まで影響が及ぶことは、直接唐からそうした知識を得たとするよりも、朝鮮半島との関わりが強い時代からの観衆を引き継いだとみるべきであろう。 8世紀。平城京内では貴族がこぞって苑池(いわゆる嶋)経営に奔った。その元は平城宮の園池である。発見例は必ずしも多くはないが、そこでは意匠は類似するものの、規模は宮の数分の一であり、身分秩序と同様の明確な格差が反映している。これは年度当初の予測、「宮廷苑池が貴族や諸国苑池の原型となり、その背後には中国(唐)苑地のシステムがある」を裏づける成果である。 次年度は諸国における苑池の実態とともに、中国・韓国の苑地の事例を調査し、さらに古代苑地の実態に迫りたい。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 金子 裕之: "宮廷と苑地-平城宮にみる嶋の用語-"文化財論叢III(奈良文化財研究所学報). 65冊. 351-366 (2002)
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[Publications] 金子 裕之: "平城宮の園林とその源流"東アジアの古代都城(要旨集・中国韓国語訳). 50-62 (2002)
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[Publications] 金子 裕之: "平城宮の園林とその源流"研究論集XIV東アジアの古代都城(奈良文化財研究所学報). 66冊. 131-162 (2003)