2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
13410141
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
大城 光正 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (40122379)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 潤 筑波大学, 文芸・言語学系, 助教授 (60288850)
吉田 和彦 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90183699)
|
Keywords | ヒッタイト語 / フルリ語 / アッカド語 / 重子音 / Glossenkeil / 言語接触 / シュメール語 / 楔型文字 |
Research Abstract |
シュメール系、アッカド系、ヒッタイト系、フルリ系の各棟形文字における-(C)VCi-CiV(C)-の子音の重ね書きとその言語的要素の解析において、シュメール文字(単子音表記)からアッカド文字で重子音表記を発達させ、同文字との接触によってfortis/lenisの対立を有していたフルリ語を重子音表記でfortis、単子音表記でlenisの表示を確立し、更にフルリ人を介して、ヒッタイト書記は無声/有声の対立を有していたヒッタイト語の無声をフルリ人の発音するfortis(重子音は単子音よりも一般にfortis)に対応させて重子音表記に、有声をlenisに対応させて単子音表記法を確立した。つまり、この考察から楔形文字言語間の接触は、(1)シュメール語とアッカド語>(2)アッカド語とフルリ語>(3)フルリ語とヒッタイト語の順序で生起したことが首肯される。 また、模形文字ルウィ語の総語彙数約語の分析においては、斜字楔形字体を有する語彙(Glossenkeil-words)の語彙数は約250語で、これは全語彙数の約18%を占めている。同語彙の大半が、-i語幹形、-(a)ssa/i-,-(a)lla/i-,-talla/i-,at(t)i-,-man,-hi(t),-(a)nt-/-(a)nti-等のルウィ系形成辞や-wi,-ti,-nti等のルウィ系動詞語形の典型的なルウィ語の言語的特徴を有する語形であり、ヒッタイト書記が同文書中に借入した来源不明語彙としてルウィ語形を明示した可能性が高い。更に、J.Friedrichの先行研究におけるヒッタイト文書中のGlossenkeil-words(140語)のほとんどが上記リストに含まれており、アッカド系limma「〜なるであろう」(<アッカド語^*lu-iwi-)やフルリ系sinahila「二流の」、ヒッタイト系dummantiyal「耳道」のようなルウィ系以外の語彙は僅少である。この指摘からも、ヒッタイトとルウィ間の緊密な言語接触の実態が推察される。上記の如く、古代オリエントの楔形文字言語間の複合的な言語接触の実態が明らかになってきた。 以上の研究については、大城が主宰する西アジア言語研究会(第10回:平成15年12月13日:京産大)研究成果の一部を発表している。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 吉田 和彦: "言語学の誕生"現代言語学の潮流. 2-6 (2003)
-
[Publications] 吉田 和彦: "歴史言語学の方法"現代言語学の潮流. 7-22 (2003)
-
[Publications] 吉田 和彦: "喉音理論と母音交替"音声研究. 7巻. 5-13 (2003)
-
[Publications] 池田 潤: "Three Notes on Israelian Hebrew Syntax"Orient. 38. 51-65 (2003)
-
[Publications] 池田 潤: "楔形文字における子音の重ね書きについて"一般言語学論叢. 6号. (2003)