2002 Fiscal Year Annual Research Report
普遍的秩序・個別国家・地方――「我々」意識の歴史的発展と法の役割
Project/Area Number |
13420002
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田口 正樹 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20206931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石部 雅亮 大阪国際大学, 政経学部, 教授 (90046970)
山田 欣吾 一橋大学, 名誉教授 (70017523)
石川 武 北海道大学, 名誉教授 (20000648)
石井 紫郎 東京大学, 名誉教授 (00009797)
村上 淳一 桐蔭横浜大学, 法学部, 教授 (80009795)
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Keywords | ザクセンシュピーゲル / 法書 / 国制史 / 帝国国法論 / サヴィニー / 貴族 / 家 / 由緒 |
Research Abstract |
本年度は計画の第二年度であり、前年度になされた研究状況の整理と基本視角の検討を前提として、更にそれぞれの時代と地域について個別の問題を取り上げて、考察と議論を深化させるように努めた。 論じられた問題と成果のいくつかを例示的に挙げれば、中世ドイツの代表的なドイツ語法書であるザクセンシュピーゲルとラテン語史料アウクトル・ヴェートゥスの関係が、個々の規定内容にまで立ち入った相互比較を通じて検討され、当時の普遍的言語であるラテン語の法史料とドイツ語による法記録との関係を考える際の一つの基礎が据えられた。また、18世紀ドイツの代表的な帝国国法論者であったピュッターが中世ドイツの国制史をどのように描いていたかが検討され、中世後期に至っても皇帝権や教皇権といった普遍的権威がドイツの国制に深く関与するものとされる一方、国制上の諸制度が帝国や領邦の諸身分による下からの同意に基礎を持つものとも考えられていたことが明らかにされ、全体として中世ドイツの国制が多層的で、かつ地方的な多様性を含みこんだものとして、認識されていたことが示された。近代に関しては、19世紀ドイツの代表的な法学者サヴィニーが自ら農場主としてかかわった民事訴訟が取り上げられ、個別的・伝純的な身分を超えた抽象的私法体系という彼の学説と貴族身分の一員としての彼の立場の間の緊張関係が、現代のシステム理論における「パラドクスの展開」の観点から検討された。 日本に関しては、日本の歴史叙述の基本型が、現政権に奉仕する者達の由緒を記すものであったことが指摘され、中世以後この基本型にそれぞれの家の歴史が組み込まれることにより、家が支配者への奉仕という文脈で意味を与えられていくことが示された。
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Research Products
(34 results)
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[Publications] 田口 正樹: "中世後期ドイツの国王裁判権と裁判籍特権・序説-13世紀後半を中心に"法制史研究. 52号(発表予定). (2003)
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[Publications] テオドシウス法典研究会(代表・後藤篤子): "(共訳)テオドシウス法典(Codex Theodosianus)(12)"法政史学. 57号. 45-61 (2002)
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[Publications] テオドシウス法典研究会(代表・後藤篤子): "(共訳)テオドシウス法典(Codex Theodosianus)(13)"法政史学. 59号. 23-40 (2003)
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[Publications] 林 信夫: "(書評)原田俊彦「ホルテーンシウス法の歴史的意義」(法制史研究・49号・2001)"法制史研究. 51号. 320-323 (2002)
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[Publications] 林 信夫: "『勅法彙纂Codex』第二巻第四章第六文法文について-「無名契約」論のために(一)"法学論叢. 151巻4号. 1-17 (2002)
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[Publications] 林 信夫: "『勅法彙纂Codex』第二巻第四章第六文法文について-「無名契約」論のために(二・完)"法学論叢. 151巻6号. 1-22 (2002)
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[Publications] 林 信夫: "近時のローマ法・ローマ史間の交流・交錯について-Umberto Laffi, Studi di storia romana e di diritto(Roma 2001),722pp.+tavoleを紹介しつつ"法史学研究会会報. 7号. 70-80 (2002)
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[Publications] 佐藤 彰一: "戦う王、裁く王-西ヨーロッパ初期王権論-"網野善彦ほか(編)岩波講座『天皇と王権を考える2:統治と権力』(岩波書店). 83-104 (2002)
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[Publications] 佐藤 彰一: "西洋史学と研究教育ストラテジー"創文. 445号. 1-4 (2002)
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[Publications] SATO, Shoichi: "Pour une valeur universelle : cas de l'historien medieviste occidentaliste au Japon"La Lettre du CoIlege de France. 6. 13-13 (2002)
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[Publications] 佐藤 彰一: "エールディーツィオー賛"『歴史学の最前線』(史学会100回大会記念冊子). 40-41 (2002)
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[Publications] 佐藤 彰一: "「歴史の風」ヨーロッパに国立歴史研究所を"史学雑誌. 112巻1号. 34-36 (2003)
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[Publications] SATO, Shoichi: "A propos du plaid judiciaire pour la restitution du patrimoine ecclesiastique de Narbonne en 782"Melanges offertes pour Prof. Shin-ichi ICHIKAWA. 34-49 (2003)
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[Publications] 西川 洋一: "(史料紹介)ベルリン国立図書館所蔵ルートヴィヒ・リース書簡について"国家学会雑誌. 115巻3・4号. 179-223 (2002)
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[Publications] 西川 洋一: "(書評)P.シェットラー編(木谷勉・小野清美・芝健介訳)『ナチズムと歴史家たち』(名古屋大学出版会)"社会経済史学. 68巻2号. 237-239 (2002)
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[Publications] NISHIKAWA, Yoichi: "Die Entwicklung der koniglichen Gesetzgebung in der Spatstauferzeit"Albrecht Cordes u. Bernd Kannowski(hrsg.), Rechtsbegriffe im Mittelalter, Peter Lang. 93-110 (2002)
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[Publications] 西川 洋一: "12世紀ドイツ王権の宮廷-その構造をめぐるいくつかの問題"渡辺節夫(編)『ヨーロッパ中世の権力編成と展開』(東京大学出版会). 79-116 (2003)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲル・レーン法邦訳(8)-アウクトル・ヴェートゥスとの比較・対象をも兼ねて-"北大法学論集. 53巻1号. 209-250 (2002)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲル・レーン法邦訳(9)-アウクトル・ヴェートゥスとの比較・対象をも兼ねて-"北大法学論集. 53巻2号. 296-340 (2002)
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[Publications] 石川 武: "ザクセンシュピーゲル・レーン法邦訳(10)-アウクトル・ヴェートゥスとの比較・対象をも兼ねて-"北大法学論集. 53巻3号. 352-394 (2002)
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[Publications] 神寳 秀夫: "ドイツ領邦絶対主義形成過程における中間的諸権力(中-二)"史淵. 139号. 117-142 (2002)
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[Publications] 神寳 秀夫: "教会権力と国家権力"網野善彦ほか(編)岩波講座『天皇と王権を考える4:宗教と権威』(岩波書店). 161-187 (2002)
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[Publications] 和田 卓朗: "(翻訳)ディートマル・ヴィロヴァイト著「クライトマイアの国家学」"法学雑誌(大阪市立大学). 49巻1号. 163-193 (2002)
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[Publications] 和田 卓朗: "(翻訳)ミヒャエル・シュトライス著「初期近代(=近世)のポリツァイ条令における『規範の現実的通用』とは何を意味するのか」"法学雑誌(大阪市立大学). 49巻2号. 134-167 (2002)
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[Publications] 和田 卓朗: "(翻訳)ヴォルフガング・ゼラート著「犯人と犯罪犠牲者との和解-古い問題か」"法学雑誌(大阪市立大学). 49巻3号. 122-151 (2002)
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[Publications] 和田 卓朗: "大阪とハンブルグ:序論-比較の端緒を求めて-"法学雑誌(大阪市立大学). 49巻4号. 1-28 (2003)
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[Publications] 和田 卓朗: "(翻訳)フランク・アイヒラー著「ハンブルク都市法:1603/05まで」"法学雑誌(大阪市立大学). 49巻4号. 49-97 (2003)
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[Publications] 和田 卓朗: "アイヒラー論文へのコメント-主にザクセンシュピーゲル以降のゲヴェーレ概念の変容のメカニズムについて-"法学雑誌(大阪市立大学). 49巻4号. 98-131 (2003)
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[Publications] 村上 淳一: "貴族サヴィニーの民事訴訟"桐蔭法学. 9巻2号. 1-31 (2003)
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[Publications] ISHII, Shiro: "Ordeal and Torture in Judicial Procedure : the Case of Japan"B.Durand(ed.), La Torture Judiciaire, Approches historiques et juridiques. 107-123 (2002)
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[Publications] ISHII, Shiro: "Traditions of Narrative History and the Recent History Textbooks Debate : A Pending Issue for Japan in the Twenty-First Century"Anglo-Japanese Academy Proceedings, International Center for Comparative Law and Politics. No.7. 285-304 (2002)
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[Publications] 新田 一郎: "継承の論理-南朝と北朝"網野善彦ほか(編)岩波講座『天皇と王権を考える2:統治と権力』(岩波書店). 153-179 (2002)
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[Publications] 新田 一郎: "日本の歴史家二十五人:22 石井良助"日本の歴史月報. 22号. 3-5 (2002)
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[Publications] 石井 紫郎, 宇野 隆夫, 赤澤 威(編): "武器の進化と退化の学際的研究"国際日本文化研究センター. 300 (2002)